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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 21
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が居たって!」

(……………………はい!?)

 思いがけない言葉で目を見張る。

「教会の下! 崖の近くで走ってたらしいぞ!」
「西の崖下ぁ!? なんだって、そんな危ないトコに!」
「そういえばあの子、時々妙に崖を気にしてたわよね。ここじゃドボーンにならないーっとか、高さが足りないーっとか……」
「はぁあ……? 自殺願望でもあんのか、アイツは!?」

(無い無い! 私に自殺願望なんて無いし、西の崖下に行ったのは数日前の一度きりだよ! っていうか、私はここに居るんですけど!?)

「とにかく行こう! 一刻も早く取っ捕まえないと、グレンデルがそろそろ本気でヤバイ!」
「ああ! ったく、村のみんながこんだけ大騒ぎしてるってのに! 今までドコ行ってたんだかなぁ! 手の掛かるやつ!」

(ごめんなさい! 自分でもよく分かんない!)

 急展開に焦り、ついつい、勢いよく地面に手を突いてしまったが。
 走り出した一団に、枯れ落ちた木の葉の悲鳴は聞こえなかったようだ。
 ゆっくり立ち上がって教会方面の道を覗けば、周辺に居た大人達の大半がバラバラと遠ざかっていく。
 残った数人は、少しだけうろたえる素振りを見せたものの。
 すぐにアルフィンへの呼びかけを再開した。

(促されてる。どう考えても、アルフィンの家に誘導されてるよね、これ)

 村の人達の多くは、『ミートリッテ』を追いかけて西寄りの崖に集まる。
 この話を聞けば当然、今は部屋に押し込まれているらしいグレンデルも、彼を心配して集まった人達も、揃って家を飛び出す。

 この場所からの移動も、家への侵入も、難易度は格段に下がった。
 見えない手に『さあ、行け』と背中を押された気分だ。
 それが良い意味でなら、素直に助かったと思えるのだが。

(ええい、もうっ! 善かれ悪しかれ、どっちみちアルフィンを捜す為には行かなきゃいけないんだ! うだうだと迷ってられるか!!)

 わざわざ罠を張ってくれてたのなら、アルフィン達が無事でいる可能性は極めて高い。
 急げばまだ間に合う! と気合いを入れ直し、東側を正面に見据える。

(女の人が住宅区側に一人と教会側に二人。男の人が村の出入口側に一人。うん。これくらいなら大丈夫!)

 坂道を手前に、低姿勢で構え。
 定めた進路からみんなの目線が外れる瞬間をよく見極め……(はし)る!

「え?」
「ん? どした?」

 坂道の上方と下方で、男女が同時に振り返った。が。

「今、そっちで何か音がしなかった?」
「いや、こっちには何も無いぞ。……風か?」

 ぐるりと回した彼らの視界では。
 数枚の真新しい木の葉が、ひらひらと優雅に舞い踊るばかりだった。



(死ぬ……。冗
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