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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十四話 明日への展望
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エリザベート・フォン・ブラウンシュバイク、サビーネ・フォン・リッテンハイムを恐ろしいとは思わない。恐ろしいのは彼女たちの後ろに強大な外戚が居る事、彼らに与する貴族たちが居る事だ。

たとえエルウィン・ヨーゼフの即位を認めたとしても彼らは常に潜在的な敵としてあり続けるだろう。隙有らば権力奪取を図るに違いない。彼らの存在そのものが帝国の不安定要因になっているのだ。

彼らを排除する。だが皇帝は本当に十月に死ぬのだろうか? 死ぬのであれば、内乱に持っていく事はそれほど難しくない。

しかし、もし死なないのであればどうするか、長生きするようであれば何らかの方法で彼等を暴発させなければならない。そうでなければ同盟が戦力を回復し、内乱に介入しようとするだろう。どうすれば良いか……。



自由惑星同盟には今回大きな打撃を与えた。おそらく逃げ帰れたのは二個艦隊強、三個艦隊未満だろう。人材面でもモートン、パエッタが戦死、クブルスリー、ホーウッド、アップルトンが捕虜になった。

国内は激震するに違いない。同盟政府、軍首脳部がどう変わるか。統合作戦本部長、宇宙艦隊司令長官には誰がなるのか、ヤン・ウェンリーの処遇はどうなるのか? 

フェザーンも十分帝国の恐ろしさを知ったはずだ。そして今回の同盟の敗北、ルビンスキーは何を考えるか、どう動こうとするか。

同盟、フェザーンの動きを見極める必要がある。特にフェザーンだ、原作とはかなり乖離が出ている。注意が必要だ。幸い判断する材料が無いわけじゃない。先ずはそこからだろう。


帝国暦 487年8月23日 10:00 帝国軍 総旗艦ロキ ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ 


艦橋は明るい声に溢れている。帝国軍は大勝利を収めた。これほどの大勝利は過去に例が無いだろう。艦隊はシャンタウ星域で集合した後、オーディンに戻る事になった。

皆が喜んでいるなか、ヴァレンシュタイン司令長官と私だけがその中に入っていけずにいる。私は仕方ない、しかしヴァレンシュタイン司令長官は一人静かに考え事をしている。

何時も思うのだけど、司令長官ぐらい冷静沈着という言葉が似合う人は居ない。どんなときでも喜びを爆発させる、感情的になるという事が無い。今回の戦いでは僅かに苛立ちを見せたけどあんな事は本当に珍しいことだ。

司令長官は何を考えているのだろう? 次の戦いの事だろうか? 相手は同盟? それともフェザーン? そんなに根をつめて大丈夫なのだろうか? 私の視線に気付いたのだろう、司令長官が声をかけてきた。

「どうしました、少佐」
「いえ、何をお考えですか?」
「……他人に言えるようなことじゃありませんよ。勝つ事ばかり考えると人間は際限なく卑しくなるというのは本当ですね」

司令長官は照れ
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