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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十六話 余波(その2)
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俺に視線を向けた。冷笑は無い、楽しそうな笑みを浮かべている。分かる、貴官の想いが俺には良く分かる。
「なかなか楽しませてくれる方だ、そうは思いませんか」
「同感だ、良い玩具を見つけた子供の様な気分だな」
俺が笑い声を上げるとヴィオラ大佐も笑い出した。



宇宙暦 795年 9月16日  ハイネセン  統合作戦本部  ジョアン・レベロ



「大変だったよ、議長を始め皆が君を非難した」
『そうですか』
「そうですかって、それだけかね。私もシトレ元帥も君を弁護するのに大変だったんだが」

ヴァレンシュタインのそっけない返事にトリューニヒトが不満そうな表情をした。シトレも同意するかのように頷いている。親の心子知らず、そんなところだな、トリューニヒト、シトレ。全く可愛げのない小僧だ。

『半分くらいは私を責める事で委員長閣下を責めたのではありませんか』
「……」
『いけませんね、他人の所為にするのは政治家の悪い癖です。自分の責任を認めようとしない、それなのに功だけは声高に言い立てる。困ったものです』

平然としたものだ、思わず失笑が漏れた。私だけじゃない、皆笑っている。トリューニヒトでさえ苦笑していた。残念だな、トリューニヒト、出来の良すぎる息子は親の欠点を親以上に知っているようだ。

「つくづく思うのだが君は政治家になるべきだよ、必ず大成する事は間違いない、保証する」
『冗談はやめてください、私は軍人でさえ嫌々やっているんです』
「その割にはなかなかのものだが」

シトレの言葉にヴァレンシュタインが顔を顰めた。もったいないな、確かにこの男は政治家向きだ。それなのに彼は政治家という職業に対してネガティブな感情を持っている。

「政治家は軍人よりも嫌かね」
『大量殺人者と大量殺人教唆者とどっちが良いかと訊かれているような気分ですよ、国防委員長。ついでに言えば百三十億の同盟市民の面倒などとてもみる事は出来ません。私はそこまでお人好しじゃない』
憮然とした口調と表情にまた失笑が起きた。それにしても大量殺人教唆者か、主戦論を吐くトリューニヒトへの当てつけだな。

「君と話すのは本当に楽しいよ、これは冗談ではないよ。私の周囲には君の様に面白い人間はどういう訳かいないんだ、何故かな?」
『私に聞かないでください、興味ありません』
にべもない返事だ。トリューニヒトとシトレが顔を見合わせる。トリューニヒトが肩を竦めるとシトレが首を横に振った。

「さてそろそろ本題に入ろう。例の件だが私とシトレ元帥、つまり軍が担当することになった」
トリューニヒトの言葉にスクリーンに映るヴァレンシュタインは微かに笑みを浮かべた。

ここからの会話は細心の注意がいる。ヴァレンシュタインの乗っている船、ベリョースカ号は民間
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