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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十六話 余波(その2)
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かけてきた。覚束ない表情だ。想像を超える事態に困惑しているのだろう。
「事実でしょう、証拠も出た」
「通信室ですか」
「ええ、レムシャイド伯の部下が確認しましたからな」
今度はハアと溜息を吐いた。重症だな、これは。マリネスクは信じたくは無いのだろうがフェザーン商船が七隻も自主的に護衛をしている。一抹の疑いは有るだろうが真実だと思っている人間は多いだろう。それほどあの通信のインパクトは大きかった。
「どうしました、こんなところで」
声のした方向に視線を向けるとヴィオラ大佐が大きな腹を揺すりながら近づいてきた。面白い男だ、外見と中身がこれほど違う男も居ないだろう。切れる男には見えないがこの男の協力無しにはフェザーンでの作戦は成功しなかった。
「いや、これからどうなるのかと思いまして……」
「どうもなりませんな、マリネスク事務長。提督が言っていましたが、宇宙は全てが変わり、何も変わらないそうです」
そして宇宙には呪いが満ち溢れ、人類は恐怖と怒りに震える事になる。この部分は言わない方が良いだろう。
マリネスクは妙な顔をしたが諦めたように首を振って去って行く。その後ろ姿を見ながらヴィオラ大佐が話しかけてきた。
「大分参っているようですな」
「無理もない、フェザーン人にとっては天地がひっくり返った様なものだろう」
「天地がひっくり返ったですか、確かにそんな感じですな」
「良いのか、弁務官府の方は貴官が居なくなって大変だろう。心配じゃないのか」
俺の質問にヴィオラ大佐は肩を竦めた。
「構いませんよ、どうせ何も出来はしないんです。今頃はハイネセンにお伺いを立てているでしょう」
ヴィオラ大佐が冷笑を浮かべた。
「ヘンスロー弁務官の事を御存知ですか」
「いや、知らない」
「あるオーナー企業の二代目なのですがね、余りに無能なので重役達が持参金付きでフェザーンの高等弁務官に就任させたのですよ」
「持参金と言うのは」
「政治献金……、しこたませしめたでしょうな。そうでもなければあんな馬鹿を弁務官になどしません」
「……」
ヴィオラ大佐の冷笑が更に酷くなった。
「あの馬鹿、フェザーンで何をしていたか知っていますか?」
「いや」
「毎日愛人の家に入り浸りですよ。その女はルビンスキーが用意しました。ルビンスキーの飼い犬ですな、それで満足しているのですから愚劣にも程が有る!」
吐き捨てる様な強い口調だった。余程に耐えがたかったのだろう。
「貴官が今回の件に加わったのはそれが理由か」
「ルビンスキーに一泡吹かせると聞いてそれで協力する事に決めました。どうなろうとあのままフェザーンで腐っていくよりは遥かに良い。まあ結果は予想以上ですな、あの馬鹿も今頃は蒼くなっているでしょう」
ヴィオラ大佐が
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