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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十六話 余波(その2)
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らずに暗闇を歩いている様なものだ。どんな小さな灯りでも良い、我らには足元を照らす灯りが必要であろう」
「言い得て妙だな。訳も分からずに落とし穴に落ちるよりはましか」
侯が苦笑を浮かべた。酷い例えだ、しかし侯の言葉を借りれば確かに言い得て妙ではある。わしも釣られたかのように苦笑いしていた。

笑いを収めるとリッテンハイム侯が話しかけてきた。
「レムシャイド伯にはハイネセンに行って貰った方が良くはないかな」
「なるほど、向こうの状況を探らせるか……。どうせだ、そこまでやらせるか。名目は対地球教の調整担当者、そんなところだな……」

「そんなところだ。フェザーンには別な人間を送れば良い」
「うむ」
侯の考えは悪くない。いや、むしろ必要不可欠な一手だろう。帝国は弱者なのだ、であればこそ兎のように長い耳が要る。その一つがレムシャイド伯……。フェザーンにも早急に人を送らねばならん。さて、誰を送るか……。

「侯、クロプシュトックに向かった連中に注意を払ってくれ」
「今回の件でどう反応するかだな」
「うむ。フェザーンの件は連中にとっても他人事ではない筈だ。必ず何らかの動きが有る、見逃すことは出来ん……」

リッテンハイム侯がわしの顔をじっと見つめた。
「フェザーンに送り出すか……」
「……それも選択肢の一つだな」
邪魔だな、どう考えても貴族が邪魔になる。改革の邪魔、反乱軍との協力にも不満を漏らすだろう、そしてフェザーン……。

地球の事が有る以上反乱軍との協力体制は維持せねばならん。それを行いつつ貴族どもを反乱軍にぶつける……。さて、可能かどうか……。鍵を握るのはレムシャイド伯だな、何処まで連中の真意を探れるか、何処まで此方の意図を伝えられるか……、溜息が出た。



宇宙暦 795年 9月16日  フェザーン  ベリョースカ号     ワルター・フォン・シェーンコップ



交易船ベリョースカ号の窓から外を見ていると後ろから声をかけられた。
「ヴァレンシュタイン提督はどちらに」
「自室でお偉方と話し合っていますよ、マリネスク事務長」
「そうですか、いやまさかこんなことになるとは思いませんでしたな」
「まあそうですな、しかし悪い事ばかりじゃない。今のところベリョースカ号は安全だ」

マリネスクは俺の言葉に頷きながら外を見ている。表情は決して明るくない。交易船ベリョースカ号はフェザーン回廊を自由惑星同盟側に向かって航行しているがその周囲には七隻のフェザーンの交易船が同じように航行している。広域通信でベリョースカ号が攻撃されればフェザーンが報復を受けると知ったフェザーン商人が自主的にベリョースカ号の護衛をしているのだ。

「あの話は本当なのですか」
「地球の件ですかな」
「ええ」
外を見ながら問い
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