第1話 この男、幻想入り
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上下フレクターパターンの迷彩服に、黒色の半長靴という、なんともミリタリー要素が豊富なファッションスタイルである。
男はふと頭上を見上げた。
「....何処だ...、此処...。」
男は疑問を誰に問いかける訳でもなく、その場で1人呟いたに過ぎなかった。その問いに答えるモノが居るとすれば、人間以外の何者かになるだろうが...。そのことを、今の彼には知る由も無い。
何時の間にか寝落ちていたのか、辺りは更に暗くなっていた。今晩は帰宅は諦めて、此処で野宿する。そう決めて再び眠ろうとした彼の下に、危機が迫っていた。獣が唸る様な音が聞こえ、再度目を覚ます。
「気のせいか...?」
睡魔に襲われながらも無理矢理身体を起こし、リュックの中からナイトビジョンを取り出し周辺を注意深く観察する。...彼の目には、信じられない光景が映し出された。
「.......。」
ナイトビジョン越しに見たモノ。それはまさに異形の者だった...。全身を体毛でビッシリと覆われており、その身体付きはこの環境の中で作り上げられたが如く逞しい。ゴクリと唾を1回飲み込み、冷静に思考を巡らせようとするもそうする猶予は最早無い。口と思われる部分からは、涎がダラダラと地面に向かい滴り落ちている。とりあえず目の前に居る化け物が、自身を捕食しようとしていることはほぼ明らかだろう。
「(何だ、コイツ...?怪物か...?此処で戦うか...?いや、相手が何者かわからないのに、そりゃあ無謀な気もするな...。...逃げるにしても同じか...。).....。」
逃げるにしても、戦うにしても、あまりにも無謀。もし相手が自分よりも身体能力が高かったら...?逃げれば後ろから追われ、捕まり食われる。戦えば、恐らく殺された後に食われる。...さて、どちらを選ぶか...。男は化け物と同じタイミングで行動を起こした。リュックから隠し持っていたダガーナイフを抜き取り、化け物に襲いかかる。
「黙って死ぬと思うな!」
ナイフを化け物の肌に突き立てる。先手を取った勢いに乗って、その後複数回に渡り様々な箇所を刺突したが、効果はあまり見られない様だ。出血はしているものの、弱っている気配を見せてはいない。そのまま近くの大木に叩き付けられ、背部に凄まじい衝撃が走る。一瞬だけ呼吸が止まり、混乱状態に陥るがそれもすぐに回復した。凄まじい痛みが身体を襲い、その場で片膝を付いたまま男は立つことが出来なくなった...。
「ゲホッ、ゲホッ...!」
「.......。」
無言で近寄る化け物。刻一刻と捕食される時を待つ身となった男の胸中には、まだ生きたいという気持ちが強く残っ
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