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SAO−−鼠と鴉と撫子と
3,復帰戦
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外に出るが、気をもみすぎているようで、所在なく武器屋の前をウロウロしている。

「モードは初撃決済モードを選んで。それなら本気でやっても死なないから」

頷いてタッチするその顔には自分のではなく、こちらの心配をしているようだ。
俺が本気を出せる、ということに気づいていないらしい。

カウントが目の前を過ぎていく。自然と気持ちが落ち着いていく。数カ月ぶりの戦闘なはずなのに、体は数秒前のように何をすべきかを覚えている。

「私が勝ったら、この街から出ないことを約束してくれないか?」
「じゃあ、俺が勝ったらこれから先、あんたは俺の奴隷な」

奴隷、という言葉を聞いてヤヨイの顔が明らかに歪む。これでいい、作戦通りだ。
勿体ぶったように右腕で短剣を抜き放つ。鞘を捨てる動作に隠れ、バレないように腰からもう一本のナイフも抜いた。

決闘の合図とともに、ヤヨイが前へと出る。初心者ならではの自身の筋肉だよりの突進。あくびが出るほど間延びしている。

「ハァァァァ」

突進に合わせて右腕でシングルシュートを放つ。急加速したライトエフェクトは残像を輝かせ、何も守りのない首筋へと向かう。

反射的に、ヤヨイは躰を捻ってその光弾から身を逸らした。未知への恐怖のあまり横っ飛びに近いモーションになってしまい、俺の前にズサァ、と倒れこむ。砂埃がモウモウと立ち込める中、俺は馬乗りになってもう一方のナイフを首筋に突きつけた。

「俺の勝ちでいい、自称最強さん?」

「……まだ……まだだ」

俯いたまま、うずくまったヤヨイは俺の手を払おうと藻掻く。
だけど、体勢の差を払いのける筋力値なんて初期レベのステ振りではあり得ず、ただもぞもぞと暴れまわるだけにすぎない。

「いや、今のでわかったっしょ。ソードスキルも使えないのに……」
「もう一度だ!!」

顔を上げたヤヨイの瞳には何やら液体が。SAOでは感情再現がオーバー目に表現されるはずだが、泣くってどういうことよ。

「私が、負けるなんて有り得ない。有り得ないんだ」
「−−呆れた。自分で自分の負けすら認められねぇのか。オマエは」

警察というからどれだけ出来た人間なのかと思えば、何の中身もないただの負けず嫌いだなんて。
余りに喚くので辺りには少しづつ人が集まってきている。外から見れば完全に俺がいじめてるだけかもしれない。

めんどくさいので俺はメニューからリザインを選び、腰を上げる。

吹き出してくるWINNERのウィンドウは何たる皮肉か。ヤヨイの瞳からはとうとう堪え切れず涙が吹き出した。

「ック」
涙をさっと拭って俺を睨んだ彼女は、脱兎の如く走りだした。敏捷ステータスは初期のままのはずなのに、恐ろしく速い。群衆を掻き分け、曲がり角を抜け、そして見えなくなっ
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