暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−−鼠と鴉と撫子と
2,遅れたスタート
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人間万事塞翁が馬。そんな言葉を習ったのは確か高校生の時だった。

塞翁さんの馬のあれやこれやを周りが幸だ不幸だと言い募っているが、それが不吉なぐらい裏目に出るというなかなかシリアスでどんでん返しの多い作品だ。

俺の場合はどうなのだろう。

βテストに受かったのは幸だ。
留学は不幸、少なくとも俺の中では。
それで事件に巻き込まれなかったのは一般的には幸だろう。
では、今の状況は幸か不幸か?

「「リンクスタート」」

視界が切り替わっていく感覚。聴覚が幻想の音を捉える。
映しだすのは遙か上空から見下ろす虚空に浮かぶ巨大な城だ。

俺は、世界で初めて本当に人が死ぬ仮想空間に旅立った経緯を反芻していた。

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俺のことを待っていた女性警官は自身を橘弥生と名乗った。
近くに待機していた警察車両(黒塗りの偉そうなヤツ)に乗っている間にもたった名詞には「警察庁・SAO事件対策課」と書いてあった。

思わず、「警察って儲かるんですか?」と尋ねてしまったときはギロリと睨まれたが、基本的には最初のイメージ通りの凛とした人らしい。

そうして連れられたのは警察の取り調べ室、ではなく一般的な病院の執務室だった。

白く塗られた外壁、赤い十字。
スタンダードな病院の姿よりも始まりの街の教会の方が医療のイメージがあるあたり、俺は骨の髄までアインクラッドに侵されていると言って良いだろう。

うん、と目の前の男は気軽な感じで第一声を発した。確か名前を菊岡と言ったか。
「まずは留学でお疲れのところを来てくれてホントにアリガトウ。あ、これ僕のお気に入りだから食べて食べて」

と、目の前に置かれたのは料理雑誌なら星が幾つつくかという高級ケーキだ。
思わず、断ろうとしたが目の前でバクバクと食べられて居所がない。仕方なく一口と口に含んだら、案の定、トロけるような上品な甘さが口の中に広がった。

「経費だからどんどん食べてね。いや、だけどSAO購入者の最後の一人が見つかって本当に良かった」
「俺が最後だったんですか?」
「うん、他の人達は即日ログインしたか、ニュースを見て逆に連絡してくれたよ。だから一万人っていてるけど、実際には9900人位なのかな?ログインしたのは」

残り100の方が気になるでしょ?という俺の心を読んだ菊岡さんに思わず頷く。完全にあちらのペースだが、情報のためには少しの待ちも必要だ。

「今まで回収した99人の内、使える状態でソフトを回収したのが70、残りは破損していて使い物にならなかったね。そのうちの60は既に僕達の方で解析に回していて、大半が壊れちゃったよ。」

茅場さんが厄介なもんを大量に仕込むから、解析
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