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たった一つの笑顔
第七章

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「いないと思うから」
「とんでもない娘拾ったのね」
「ええ、この通りね」  
 早速だ、ミミは。
 沙織の足に噛み付いていた、一瞬だったが。
 沙織は真礼にその足を見せてだ、こうも言った。
「悪いことするでしょ」
「実際にね」
「そう、こうした娘だから」
「気をつけてよね」
「わかったわ」
「それじゃあね」
 ここでまた言った沙織だった。
「まずはこの娘に御飯あげて」
「それからね」
「晩御飯作りましょう」
「じゃあ私もね」 
 真礼はにこりと笑ってだ、沙織に言った。
「一緒にね」
「真礼ちゃんもお料理上手だからね」
「任せてね」
「それじゃあね」
「まずはこの娘に御飯あげて」
「久し振りに二人で作りましょう」
 沙織はにこりと笑ってだ、真礼に言った。そして。
 足元のミミ、今度は右の前足でちょっかいをかけている彼女を見てそのうえで言ったのだった。
「まずはこの娘にね」
「あげるの」
「そう、最初はね」
「猫ちゃんが第一なのね」
「ええ、妹なのに」
 ここでだ、沙織は彼女には珍しい苦笑いになった。そのうえでの言葉だった、
「もうお家で一番偉そうよ」
「お姉ちゃんは大変ね」
「全くよ、けれど」
 すぐにだ、沙織は優しい笑顔になった。
 そしてだ、真礼にこうも言った。
「この娘といるとね」
「それだけで癒されるのね」
「そうなの」
 こう言うのだった、そして二人で料理を作ってミミのことを語り合う前にまずはそのミミに御飯をあげた。キャットフードを食べたミミは。
「ニャーーーー」
 お水も貰ってそのうえで一言鳴いた、その時の機嫌をなおして笑った様な彼女の顔を見てだ、沙織も優しい笑顔になった。真礼はその笑顔が彼女の最大の元気の素だとここで完全にわかった。


たった一つの笑顔   完


                           2016・3・18
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