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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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勝手に意外にも王国のルーズさが見て取れる光景である。北へ旅立つ他の面子も同様で、同僚や友人等と語り合っているようであった。
 式典までまだ猶予があるようだ。誰かと話しておくのもいいのかもしれない。そう思っていると、ふとトニアの姿を台座の近くで認めた。慧卓は近寄って声を掛ける。

「お早う御座います、トニアさん」
「はい、お早う御座います。・・・いよいよ出立ですか・・・。長いようで短い日々でしたね」
「なんか永遠の別れのように言ってますけど、別に今日で現世とお別れする訳じゃありませんからね?」
「存しております、ケイタク殿。貴方が居なくなった王宮は俄かに寂しいものとなるでしょう。俄かに、ですが」
「・・・本当、時々食えないよなぁ、貴女は。・・・後は頼みますね。コーデリアを近くで守れるのは、貴女だけなんですから」
「はい、胸に誓っております。姉上が嘆き哀しむ姿は、見たくありませんから」

 トニアはそう言って笑みを浮かべ、頭を垂れてそそくさと言ってしまう。ちょっと間が悪かったなと反省しつつ、手の空いてそうな者を探していると、否応にもその人物が目に入った。人混みから離れて口元を隠しているミルカである。近付いてみると、やつれてる一方で喜んでいるような顔をしていた。 

「よう、お前とも暫くのお別れだな、ミルカ。・・・なんかやつれてる風に見えるけど・・・」
「えへへへ・・・そう見えます?」
「いんや、すんごい喜んでいる風に見えるわ。一体昨日何があったんだ?」
「聞きたいですか?」

 気色の悪い笑みを見せ付けられて、慧卓は顔を歪めていやいやと頸を振った。くすりと笑みを零すと、ミルカは一風変わって引き締めた表情を浮かべた。

「レイモンド様より言伝を預かっております。『先日の騒動を起こした生き残りが、北嶺のクウィス領内で目撃された。充分に注意されたし』、との事です」
「・・・面倒事はこりごりなのに、なんでこうも気ままに舞い降りて来るんだか」
「待ち構えているのですよ、貴方の勇気を」
「ふん。まっ、精々気を張って頑張るとするかな。・・・怪我しないようにな」
「貴方こそ。御武運をお祈りします。・・・まぁ、死なない程度にやればいいんじゃないですか?」
「はいはい、生き残りますよ」

 期待の欠片の無い言葉にへらへらとしていると、ミルカは一方を見遣って軽く笑みを浮かべ、頭を下げつつその場を後にしていく。慧卓がその一方を振り返る。彼には到底着こなせぬフルプレートの鋼鉄の鎧を着用したハボックと、ミシェルとパックの両名が其処に立っていた。

「中々友人が多いようだな、ケイタク殿」
「ハボック隊長」
「友は大いに越した事は無い。貴殿の事だ、その温かみのある態度が自然と友を増やしていくだろう。だが時には数だけでなく、質にも気を配
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