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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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だけなのか?」
「・・・」

 慧卓は正面から再度口を閉ざした彼女に向き直り、穏やかな表情を保ちつつも、今まで以上に真剣な色を瞳に浮かべた。己を過小評価されるのは、プライドが文句を抱く一方で飲み込める相談である。だがそれだけならば兎も角として、尊敬と友愛を感じるアリッサを、彼女の力を信じてもらえないのは我慢ならなかった。

「相手が無知で無垢な相手ならそれも通用するだろうさ。でも俺等はもう立派な騎士だぞ?アリッサなんて、昔からお前に連れ添って幾多の修羅場を乗り越えている。エルフが嫌いだなんだで、一々立ち止まる人だと思っているのか?俺が未熟なまま右往左往するだけだと思っているのかよ?
 嘗めないでくれ。王国の騎士は細事に立ち止まったりはしない。陛下から下賜された命でなくとも、友と友の笑顔のためを思えば、必ずそれを全うしてみせる。いいか?一方的な愛は不完全なんだ。互いに信頼し合ってこその感情なんだ、それは。・・・コーデリア、俺達は貴女を常に信じている。だから今度は、俺達を信じてくれ」

 真摯に紡がれた言葉に、コーデリアの心の殻は罅割れて破片を散らす。何とも些細な事で悩んでいたのだと、自分自身が矢張り馬鹿に思えてならなかった。

「・・・私、まだまだ未熟だな。皆に何時までも甘えたかったんだ・・・ずっとずっと、一人で思いを完結させていたんだ。ほんと、馬鹿な王女だよね」
「コーデリアっ」

 長い諭しの後に更に己を卑下するような発言を聞き、慧卓は怒ったように声を大にする。そしてその表情をさっと引き締め直した。目前に立つ少女が唯の想い人に留まらぬ、凛々しき王女であると思い直したからであった。氷のように透き通り、凛とした声で彼女は迷い無く言う。
 
「私は誓います、騎士ミジョー。私の悩みや惑いを、貴方達、信頼の置ける人々と遍く共有します。これが王国の未来を救うと信じ、確信したがための誓いです。故に命じます。貴方はその人々を代表して、私に誓いなさい」
「・・・誓います、王女殿下。私共は王国の旗を仰ぎ、畏敬する者。陛下の御身を守り、王女殿下の御身を守護する者。樫の幹と花を育てる者。殿下のためにも、その誓いを全うしていただくためにも、必ずや我等は貴女様の悩める御心を拝聴させていただきます。時には非礼を働くかもしれませぬが、それは真摯に貴女を思うがため。貴女の愁いを払う事で、王国が更なる繁栄を育むと希望するためであります。
 ・・・コーデリア、何時でも話してくれよ?俺達はずっと、お前の味方だからな」

 慧卓は笑みを浮かべながら、己の頸に掛かった首飾りを取る。紫の妖艶な光沢が放たれており、慧卓の手によってそれがコーデリアへと移されようとしていた。

「これ、誓いの代わりと言ってはなんだけど、コーデリアにあげるよ。きっと、似合っている」

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