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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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いそうだからな。・・・それに、コーデリアの悩みを共有したいし」
「え?」
「・・・なんでもない」

 暗闇の中で慧卓はぷいと顔を逸らした。コーデリアは、その頬に咄嗟に差した赤みを察する事が出来ない。彼女は石柱へと目線を戻し、僅かに寂しげな口調で言う。

「ケイタクさんとアリッサ、明日、出て行っちゃうんだよね、この王都を」
「うん」
「他には誰が行っちゃうんだっけ」
「リタさんだけ。クィニさんを説得して、連れて行く事にした。勝手でごめん」
「いいのよ・・・でも、寂しいね。向こう半年は会えなくなるんだよ」
「・・・そうだな、寂しいよな」
「それだけじゃない。悔しいんだ」

 静かな言葉を呟く。心中に溜まった感情がそれを機として、闇に溶け込むように、石に染み入るように吐露されていく。

「王女なのに何も出来なかった。この国の最後の王女なのに・・・私は二人を、自分が好きな人達を王都に留めておく事が出来なかった」
「・・・最後の、王女」
「・・・一番上の姉さんは、帝国の王子に嫁いだの。帝位の第一継承権を持つ王子に。・・・凄く格好良くて、凛々しい人だった。武芸にも秀でていたし、頭もよかった。宮廷の皆が姉さんを見て自然と頭を下げてた。侍女も、宦官も。あの人に逆らうなんて、国王と執政長官以外に誰も出来やしなかった。あの人は何時だって、自分を主張していた。
 なのに、私はこの様だよ・・・。顔だけは良いのに、政治的な力も無いし、武芸が出来るわけでも無い。姉さん達が居なくなったこの国を建て直すのが私の役目なのに、それを全うできないままでいる。明らかにおかしい決定や考えに異を唱える事は出来ても、結局、それを手放すの。・・・やになっちゃう、本当に」

 視線を落として、柱の手前に敷かれている石床にそれを送った。瞼が俄かに落とされ、唇がそっと引き締まった歪みを描いていた。

「私、もう大人なのに、自分の力量を把握出来ていない。いっそ私じゃなくて姉さんが生きていれば・・・」

 慧卓は何も言わずにその言葉を静聴する。二人の間で暫し、無音のままの状態が続いた。花草が雨後の香りを送ってくる中、慧卓は落ち着いた口調で話し始めた。

「・・・そう、だな。コーデリアは別に腕っ節も強くないよな。今ままでそんな姿、一度も見た事が無い」
「そうそう、私、鎧が着れるだけで力仕事が駄目なの」
「それに、政治的な力量とか、そういうのに聡い感じも見られないな。なんか俺と似て何処か抜けてそう。肝心な所で失敗をしそうな感じがする」
「止めてよ、そういうの言われると本当にしそうな気がするんだから」
「悪い、俺もしそうな感じがしたから自重する」

 頬をかりかりと掻く友人の言葉を聞いた後、コーデリアは悟られぬように溜息を零した。

「・・・結局、顔の
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