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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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はやっぱ苦手だ」

 草むらからがさっと立ち上がったのは、矢張りコーデリアの友である慧卓であった。大方、廊下を歩いてきた彼女を付いてきた腹であろう。蒼いチュニックについた葉っぱを払い落としながら彼は歩き、そして庭中にぽつんと聳える石柱を見遣って、今更ながら気付いたように表情を硬くさせた。

「・・・此処って、その、お墓だったのな・・・ごめん、色々と台無しにして」
「本当に色々台無しだったよ。花も、地面も、雰囲気も。序でに私の気分もね」
「す、すみません・・・どうか平に御容赦を・・・」
「そこまで頭下げなくていいってば・・・もう、変な所で大袈裟なんだから」

 慧卓は頭を上げて、コーデリアの隣に立って尋ねる。

「さっき、姉さんって言っていたけど・・・」
「そっか、ケイタクさんにはまだ言ってなかったね。私ね、姉が二人居るんだ。一人が七つ上で、もう一人が五つ上。この御墓は、五つ上の姉さんの御墓」
「・・・そっか。俺も手を合わしてもいい?」
「うん、ありがと」

 両方の掌を合わせて口元へ持っていき、慧卓は瞳を閉じる。作法は違えど心意気は理解できた。コーデリアは両手の指を絡め、胸の前へ持っていく。そして石柱を見詰めながら話していった。

「病死、だったらしいよ」
「・・・それ、お姉さんの事?」
「そう。生まれて間もない頃に流行り病に侵されて、二年は闘病したんだけど、そのまま亡くなったって・・・。私が生まれる前の話だから、良く分からないけどさ」
「・・・どんな人だったんだろうな、お姉さんは」
「わかんない。昔、レイモンドが言っていた事だけが頼りなんだけど」
「あの人が?・・・聞いても良い?」
「『とても可憐な娘だった』って」
「ああ、ならコーデリアも一緒だよ」
「まさか『だった』の部分まで継承してないよね?」
「それこそ、まさかだよ。今も凄く可愛い」
「ふふ、ありがと」

 くすくすと笑みを零す慧卓を横目に見つつ、コーデリアは見上げるように背の高い石柱を見遣った。

「何かに悩んだり、困ったりした時、何時も此処に来るんだ。そして何時も勇気を貰うの。亡くなった姉さんが生きたかった世界なんだもの、前を向いて確り歩いていかなきゃ駄目だって、ね」
「・・・それで、今日も此処にか」
「うん、ちょっとね」

 慧卓は、コーデリアの言葉の中に小さな寂しさを感じ取る。自分が零す言葉が返ってこないから、何時も自分の思いが一方的だから、寂しいのだろうか。だとすれば自分が出来るのは唯一つである。

「よければ、どんな事に悩んだりしてたか、教えてくれないか?」
「・・・いいの?」
「おいおい、こっちの台詞だよ、それはさ。・・・というか、友人が何時までも困った表情をされちゃ、俺もなんか、釣られて変な気分になっちゃ
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