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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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踵を返し、王女に背を向ける栄誉を受けながら疾駆していった。コーデリアは愛すべき者の背中を見詰め、慈愛に満ち満ちた視線を送っていた。幾度も攫われた唇は灼熱の如く彼女の想いを焦がし、恋慕を更に掻き立てるものであった。ぎゅっと首飾りを握り締める彼女には、既に迷いや不安の一字など存在する余地が無かったのだ。
 


 開かれた街路を愛馬と共に疾駆する慧卓。風を切って勝利の力強い笑みを浮かべて走る様は、御伽噺にでも出て来そうなほど快活で、魅力に溢れる姿である。視界の奥に、道の端に整列する黒衛騎士団の姿を捉えた。段々と近寄るそれに向けて、慧卓は左手をぐっと天に向かって突き上げた。豪刃の羆はそれを見て、彼と同じく、勝利の豪快な笑みを浮かべた。

「奴はやったぞっ!!!!!」
『大オオおおおおおおっっっっっ!!!!!』

 湧き上がる大歓声。兵のみならず、臣民すら交えての歓声であった。慧卓は拳を突き上げたまま、その波の真っ只中を駆け抜けていく。そして擦違い様に、熊美とハイタッチを決めた。
 一時の騒がしさに包まれた王都を華やかな話題が占領するのは時間の問題であった。うら若き最後の王女と異世界の騎士。二人の淡く激しい恋は臣民達の間で大いに盛り上がり、酒の杯となって記憶に刻み込まれていったのである。

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