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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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れては獲物とて堪らないでしょうねぇ。身体の張りが段々と無くなってきているのに、あんな仕打ちまでされてはそれが更に加速してーーー」
「す、すいません、そろそろ御堪忍して頂けませんか・・・」

 生々しき下の話題についていけず、また父君達の視線にどうする事も出来ない彼は、困惑の表情を浮かべるよりする事が無い。式典前に感じる筈の緊張感を崩してくれた三つの華は、清楚で、艶治な微笑を浮かべて続けて言う。

「ケイタク様、どうぞお気をつけ下さいませ。貴方の小さな背に課せられた重みは、非常に大きなものであります。一人で支えられるようなものではありません。近くには同行する勇士達が、遠くには王都の私達が貴方をお支え致しますわ」
「ゆめゆめ、全ての責を負おうとは考えてはいけません。騎士の名誉に潰されぬよう己を鍛えるのが今一番の課題なのです。王都に帰ってくる頃には、私達と相対するにより相応しき勇姿となるのを、期待しております」
「ケイタク様・・・、どうか御無事でっ。どうか、どうか御無事で居て下さい・・・。この王国に吹く新しい風となって、再び、私達の元へ戻ってきて下さいね・・・」
「・・・皆様の御厚意、とても嬉しく思います。このケイタク=ミジョー、颯爽な土産話を携えて、また此処に戻ってくる事を誓いますとも。・・・今度は、敬語抜きで話そうな」

 笑みを咲かせて声を上げてくれる事に安心しつつ、慧卓は群集の整然とした様子に驚く。最早気ままに動いているのは彼一人となってしまった。気恥ずかしげに口元を崩しながら足早に出立組の列に参入する直前、白く華やかなドレスを飾って石壇の隣に控えるコーデリアの姿を認める。結局、最後に彼女と話す時間も無かった。

(・・・コーデリア・・・)

 彼女の胸元に光る紫紺の妖しさを視認して、慧卓は一縷の寂しさを覚えた。本当に今日限りで、コーデリアとは半年も会えなくなってしまうのだ。彼の思いを察してか彼女の方から目線を合わせてくる。数十秒か無言の思いを交わしていると、良く通る声でレイモンド執政長官が群集に言い放つ。

『陛下の御言葉である。誉ある下賜を受けし者達よ、心して聞くのだ』

 しん、として静寂に包まれた広場。鷹揚とした足取りで国王、ニムル=サリヴァンが石壇の上に姿を現して光景を睥睨する。彼の目前には北嶺調停団と監察団の一行が整列している。実際に中心の政務に携わるのは幾名だけである。慧卓ら一行とブランチャード男爵とその騎士。後は御付きの侍従や警護の者、そして任地に行くまでに利用する馬車の御者に、食糧等の必要となる物資や、政務道具を運ぶ者。延べ数十名の団体である。
 そして一定のスペースを開けてそれらを騎士や衛兵等が囲い、更には参列者の波が続いている。全ての視線が己に注がれるのを感じ取ると、国王は腹に力を込めて常の鉄のよ
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