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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の3:旅立ちの日に
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法を感じられぬ、一段と大きな喧しさが耳を突いてきて、慧卓は背中に冷や汗に近い羞恥を感じた。唐突に、騒動の中心である彼らが友人であるという事実に疑問符が湧いてくる。

「・・・友人、ですか?」
「友だとも。貴殿に形なりとも情を見せてくれている。・・・まぁ、金絡みの問題や、恋煩いが無ければ頼りになると思うぞ。・・・半年をエルフの罵倒と冬に耐えながら、心身を鍛えぬくといい。いい経験になる」
「そうですね・・・有難う御座います。必ずや、この白銀の都に帰ってきますとも」
「ふん・・・此処はそこまで煌びやかではないさ」

 そう呟きながら、ブルーム卿は自嘲げな笑みを見せて長い白の総髪を垂らす。そしてはっとして頭を上げ、何かを警戒するように周囲に視線を配ると、忌々しげに舌を鳴らして足早に去っていく。不思議な動作に頸を傾げた慧卓は、視界の端に移ってきた三色の花を見て思わず納得する。いつぞやの宴で共に語った、コーデリアを除外すれば群を抜いて美しい貴族の令嬢達であった。あれ以来疎遠であったが、向こうは覚えているのか豪奢なドレスを揺らして躊躇い無く此方に近付いてきた。
 慧卓の微苦笑を遠目から歓迎の笑みと見たのか、緑の髪をした美女が喜びを漏らした。

「っ、ケイタク様!」
「あら、やっと私達の出番のようですわね、シンシアさん」
「そのようですね」

 品のある足取りと声が近付いていくにつれて慧卓は段々と思い出してくる。緑の髪がオレリア、赤がユラ、青がシンシアである。
 きらきらとした瞳で親しき者の距離にまで踏み込んできたオレリアを制しつつ、慧卓は声を掛ける。

「お、オレリア様・・・それにユラ様にシンシア様も・・・あの、どのような御用で私めに?」
「このような時までお騒がせして申し訳御座いません。ですが北へと旅立つ前に一言、申し上げたく参上させていただきました」
「どうぞこの御無礼をお許しください、若き騎士様」
「ケイタク様・・・私、貴方が離れてしまうと思うと、胸が苦しくて・・・」
「あ、あのですね。そう畏まられるとこっちの方が困ってしまうのですよ・・・ほら、お父様方を見て下さい」

 慧卓は慌てて一方を見遣って頸を振った。露骨に視線を送ってくる三色の薄毛の男性陣が、其処に立っていた。身形は非常に良く、貴族としてあるべき気品さと豪奢さに身を包んでいる。だがそれに向かってシンシアは侮蔑混じりに小さく、粗野な鼻息を漏らす。

「あれはいいのです、夜は獣なのですから」
「あら、貴女の所もそうなの?私の所も同じですわ、何時も母様を悩ませているようで、本当に困ってしまいます」
「ああ、分かりますわ。年を重ねた分一回一回の逢瀬がとても濃厚なのですのよ。獅子の牙は、老いと若さの間が一番研ぎ澄まされているのです」
「そうそう。あんな牙に貫か
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