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【短編集】現実だってファンタジー
つぶやき総集編
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一般的な見解である。
 
 「台車男」。それがどのような存在なのか、現状の人類では答えに辿り着くことが出来ない。

 この答えが明らかになるのは、人類がもっと台車による加速エネルギーの真理を理解してからの事となるだろう。


 〜 ダイシャール・D・スゲダイスキー著『運命の車輪』-688ページより抜粋 〜
 




 = 唯一つだけ、磨いた業がある =


「――お前がこの周辺で最強と謳われる剣士か?」

 その男は、世捨て人のように山奥に暮らしていた。声をかけられた男が振り返る。
 男はどうやら薪割りをしていたらしい。男の足元には割れた木材が転がっていた。
 精悍な顔立ちだ。体も一目見れば分かるほどに無駄なく鍛えられている。そしてその腰には、北の民族特有の装飾が施された剣が下げられていた。

「……違う。俺は剣士ではない」
「見え透いた嘘を言うな。剣士以外の誰が帯刀したままうろついている。……聞いたぞ、この周辺ではお前を倒せる相手がいなくなったから、剣の道に飽いて山籠もりをしていると」
「それも違う。俺は元々この山の集落の出身だ。一時期は私用で村を離れはしたが、今は腰を落ち着かせている。ここが俺の戻るべき鞘というだけだ」

 確かに男の言うとおり、この周辺には集落がある。男がそこの出身でいるという話も出鱈目と言う訳ではないだろう。しかし、そんな些細なことは俺にとってはどうでもいい。

「俺は南の地で100人の剣士を果し合いで打ち倒した。東で俺に敵う剣の腕を持っている人間はいないだろう。道場を開いて剣術の弟子も多く輩出した。しかし……俺の飢えはまるで癒えない。俺の腕が、剣が、もっと剛の剣士と戦えと囁くんだ」

 この身体は四十を過ぎた。現役の剣士としてはそろそろ引退を考えてもいい頃合いだ。しかし、鍛えれば鍛える程に体は衰えを知らずに洗練され、老いるどころか剣技は更に鋭さを増す。若かりし日に燃えた求道者としての自分が、まだだまだだと心の内で猛り狂うのだ。

「そんな折、北に最強の剣士がいると聞いた。話ではその男は妖魔を斬り、罪人を斬り、挙句は神さえその剣で断ち切ったというではないか。なぁ――『北の英雄』ラメトクよ」

 俺は、剣を抜いてその男――ラメトクに突き付けた。

「俺と死合え。全身全霊を込めて打倒するから、全身全霊を込めて俺を打倒しに来い。或いは南の英雄と謳われた俺の渇きを、お前ならば癒せるかもしれぬ」
「………勝手な男だ。俺はまだ名乗ってもいないし、戦うなどとは一言も言っていないというのに」
「今、こうして剣を突きつけても貴様の気配には微塵も揺らぎがない。それが貴様がただならぬ剣士である事の証左に他ならん」

 並の人間なら腰を抜かして小便を漏らしてもおかしくはない気迫
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