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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十九話 流し雛の奏上
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東光貞とその叔父にあたる兵部大臣、安東吉光が対面(文官の並ぶ左側)に居る。

 駒州公であり、新城の義父である、駒城篤胤大将、その嫡男であり、新城の義兄にあたる駒州鎮台司令官の駒城保胤中将が駒城家から。
 西原家からは西州公である西州鎮台司令官の西原信英大将が参列している。
宮野木家からは背州鎮台司令官の宮野木清麿中将が居る。
 そして守原家からは元北領鎮台司令の守原英康大将がいる。
守原家の次子であるが肝心の当主である長康が病に伏せており、実質的な当主はこの男だ。そして当主の息子である守原定康も参列している。
 そして五将家の分家筋や、陪臣格の者が左右、特に武官が並ぶ右側の大半を占めている。
軍監本部総長志倉久正大将は宮野木の分家筋であるし、転身支援の海上護衛の指揮を執っていた〈皇国〉水軍東海洋艦隊司令長官である浅木中将も同様だ。
将校の高等教育機関である帷幕院院長である西津忠信中将は西原家分家筋である。要職を占めている者は能力の優劣はあれど五将家とその分家筋であった。
近衛もそれは同様である、近衛総軍司令官の神沢中将も安東の分家であるし、禁士隊司令の栗原少将も西原家の分家筋にあたり、そして衆兵隊司令の実仁少将が並んでいる。
 数少ない例外は皇州都護鎮台司令の佐久間中将、龍州鎮台司令の須ケ川大将の二人である。この二人は要地の勢力争いと妥協の結果として五将家に仕えずに潰れかけていた旧諸将家から見繕われた人物だ。
武官たちの中で、衆民が名を連ねているのは水軍だけであった。水軍の軍令機関である統帥部総長の大咲大将、そして皇海艦隊司令長官である杉原中将がその筆頭である。
 そして左の文官達に関しては新城の知識はけして深いものではなく。精々が先日見知った弓月由房が内務省の高級官僚団と思しき列の中に居る事が判別できただけである。
だが、それでも最も玉座に近い所に座す者は新城も一瞬で理解する事ができた。
天龍――龍族利益代表である。

 新城は、自分の義理堅い友人の同族から視線を正面へ戻す。
緑絨毯の道を歩きだすと予想以上に深い絨毯の沈みこむ様な感触が切欠となったのか新城の背を汗が流れ落ちる いや、儀式を儀式らしくする、絨毯の外から響く式部官と皇主の無力な権威を浴する者に続く侍従武官達の足音故だろうか、彼らが歩むたびに音響が謁見の間に響き、それが逆に儀式の静謐で荘厳な空気を演出している。

 そして、遂に先導する式部官が立ち止まった。新城は式部官から三歩先へと歩み、玉座の前に立ち止まり――新城は唯一人で皇主とまみえた。
 飾りを一切つけていない軍礼装を纏う体は小柄だが全身から無形の威厳を発しており、無表情ながら優しげな印象を与える丸みを帯びた目が新城を見つめている。
 ――この状況を楽しんで、否、僕に興味を持っている。僕が何を
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