12.麻耶さんのワッシャワッシャ
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なくグリグリした。
「んぐッ?!」
「余計なことをいちいちのたまうのは……その口かッ……!!」
「てやんでぃ……あたいは何も……間違ったこと言ってねー……ぞッ!!」
「それが余計な一言だって……言うんだよッ……!!」
「あれー? かずゆきって涼風ちゃんと仲いいよねー?」
鈴谷はまためんどくさいタイミングで合流してくれる……両手に肉や野菜の乗った紙皿を持って、さっきまで別行動を取っていた鈴谷が僕らの方に近づいてきていた。
「仲良くなんかあるかッ! 今も余計なことを口走る涼風を折檻していたところだッ」
「ぶふっ……ひょっとしてかずゆき、涼風ちゃんに惚れた?」
「いやそれはない」
「心配いらねーぞねーちゃん! あたいは人のものに手を出すなんて野暮なことはしねぇ!!」
まだそういう余計なことを言うか涼風はッ!! 僕は今まさにすす風邪のほっぺたをぐりぐりと挟み込んでいる両手に力を込め、さらに力強くサンドしてやった。
「ちくしょう……あたいは……間違ってねぇ……ぞッ!!」
「だからその……余計な一言はやめろと……何度も……ッ!!」
「ぶふっ……どうするかずゆきぃ? ニヤニヤ」
「お前もニヤニヤするのはやめろ鈴谷ッ」
涼風への折檻もそこそこに、僕は鈴谷と共に少し休むことにした。涼風たちはぶーぶー文句を垂れていたが、こればかりは仕方ない。子供の無尽蔵の体力についていくには、僕は疲労が蓄積しすぎているのだ。それさえなきゃ僕だって川に入ってすいすい泳ぎたかったよ……
「はい肉。全然食べてないでしょ?」
「ん。ありがと」
「どういたしまして」
みんなから少し離れたベンチに二人で腰掛ける。鈴谷が僕に渡してくれた紙皿には、たくさんの肉と野菜が乗っかっていた。
「鈴谷が焼いてくれたの?」
「そうだよー。鹿島さんが“焼いて持って行ってあげなさい”って」
鹿島さん……あなたに持ってきて欲しかったです僕は……。鈴谷が焼いてくれた肉と野菜は、特別美味しいわけでもなくかといって不味いというわけでもない、焼肉のタレの味が口いっぱいに広がる普通の肉と野菜だった。
「ねーかずゆきー」
「ん?」
「ありがとね。さっきの告別式」
お互い並んで座っていて、ふたりともがみんなの方を見ているため、僕からは鈴谷の表情は見えなかった。でもその声色は、いつになく真面目な表情で僕に語りかけているであろうことを僕に伝えていた。
「突然どうしたのさ?」
「さっきの。“お前のがんばりのおかげで今日がある”っての」
二度は言わんぞ鈴谷。だって恥ずかしいから。
「そう言ってくれて、鈴谷がやったことって無駄じゃなかったんだなー……みんなの役に立てたんだなーって思えた」
「……そっか」
「うん。
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