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第三十六話その2 アンネローゼ様誘拐を阻止します。 
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う通りであろう」

 フリードリヒ4世はかすかに、ほんのかすかに憂いを帯びた瞳を国務尚書に向けた。何もかも見透かしているのか、それとも単にアンネローゼのことを案じているのか、リヒテンラーデ侯爵には見当がつかなかった。

「どう思うな?アンネローゼを宮廷から遠ざけた方がよいか?」
「臣には判断しかねることですが、愚見をお聞き届けくださるならば、今帝都にグリューネワルト伯爵夫人がおとどまりになるのはよからぬ噂を招きます。十分な護衛をお付けになり、どこか郊外の別荘にお移しになるのがよろしいかと」
「国務尚書のよきように」

 皇帝陛下はそう言って、玉座の肘掛にもたれかかった。疲れ切った顔をしていた。もめ事にはうんざりしている、そういうような表情もにじみ出して――。

 リヒテンラーデ侯爵は深々と頭をを下げ、礼儀に恥じぬよう重々しい足取りで退出したが、退出し終わってからの動きは機敏であった。彼はアンネローゼを郊外にある別荘に移すことを既に決めていたのである。このままでは宮廷内にアンネローゼ派と反アンネローゼ派が生じて抗争になる。それでなくとも今の宮廷は微妙なバランスをもってようやく保たれている最中なのだ。これ以上余計な火種を増やしたくはないというのがリヒテンラーデ侯爵の正直な感想であった。

 アンネローゼはリヒテンラーデ侯の申し出に、反対を一切唱えずに、ただ従う旨だけを伝えた。安堵したリヒテンラーデ侯はアンネローゼにどこか希望の場所があれば遠慮なく言うようにと言ったが、アンネローゼは特に何も言わず、すべてをお任せします、とだけ言ったのである。
 リヒテンラーデ侯爵は、その諦めきった顔に胸をうたれたが、それを決して表には出さず、委細お任せくださるように、とだけ述べるとアンネローゼの下を退出した。

 アンネローゼは名目上「保養」と称して郊外山岳部にある皇帝陛下の持ち家の一つに移ることが発表された。これを聞いたベーネミュンデ侯爵夫人の喜びはどのようなものであったか、ご想像にお任せしよう。
 直ちにその持ち家は手入れがされ、家具が運びなおされ、綺麗に整頓され、十数人の侍従や侍女、それに護衛兵卒たちが先行して赴き、準備をすることとなった。
 なお、アンネローゼの行先や日程については、極秘とされていたが、ベーネミュンデ侯爵夫人一派は宮内省担当者に賄賂をつかませて、その行き先と日取りを聞き出していた。

1週間後――。

 護衛の車3台に囲まれたアンネローゼの乗った車はノイエ・サンスーシを後にした。スミレ色のワンピースを着て肩にケープを羽織ったアンネローゼは、車に乗り込むと、後はただじっとその白い顔を左車窓の外に向け、数千光年先に思いをはせているかのようにじっと身動き一つしていなかった。運転手のほかに同乗していたのは侍女一人と、護衛役
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