14話
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リアさんを追い抜いて、僕が先に空中で静止する。……研究所にいた頃、急上昇に挑戦したのだがかなりの高さのある実験場で頭をぶつけた嫌な思い出を思い出した。
一夏さんが遅れて急上昇を行うが、その速度は僕たちより遅かった。一夏さんは確か、急上昇と急下降は昨日習ったばかりだったか。上手くいくはずもないのも当然だ。
一夏さんが僕たちと同じ高度に到達したのを確認して、そのまま平行に飛行する。クラス代表決定戦から何度も繰り返しトレーニングしたおかげか、大分動いてくれるようになった。
「自分の前方に角錐を展開させるイメージだっけ……。うぅ、よくわかんねぇ……」
そのぼやきにセシリアさんが声をかける。
「織斑さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」
「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだ、これ」
理解できない、と表情で語る一夏さん。安心してください、僕だって理解していない部分がありますから。スラスターの向きと関係なく飛べると知った時、物理法則を無視した存在がISだと考えることにした。まぁ、今は多少理屈が分かるが。
「説明しても構いませんが、長いですわよ? 反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」
「オーケーわかった。説明はしてくれなくていい」
「後々嫌でも学ぶことになりますから概要くらいは頭に入れておいて損はないですよ?」
僕の言葉に一夏さんは疲れたように首を横に振る。
「鬼一さんは知っていますの? 反重力力翼と流動波干渉について」
「カスタム・ウイングの最新レポートを読んでいる、という話を以前しましたが、その知識がないと話にならないんですよね。アレ」
苦笑しながら肩をすくめる。
「でしたらわたくしにも見せてもらえませんか? その、出来ればふたりで―――」
セシリアさんが言い終える前に織斑先生からの通信が耳に入ってくる。
「オルコット、月夜、織斑、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10センチだ」
その言葉に僕とセシリアさんの意識が切り替わり、和やかなものから緊張感のあるものに。
「了解です。では鬼一さん、織斑さん、お先に」
ブルーティアーズに息吹を吹き込ませ、セシリアは猛スピードで降下していく。しかし上手いもんだ。張り合う、というのはまた違うが僕も負けていられない。
蒼い流星と化したセシリアさんが地面すれすれ、ジャスト10センチでブルーティアーズを停止させた。素晴らしい見本を見ることが出来て幸いだと思う。これが代表候補生のラインであることを理解できたからだ。
「―――よし、行くか。それでは一夏さん、僕も行かせていただきますね」
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