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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十一話 シャンタウ星域の会戦 (その3)
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い。

一時間ほど敵の攻勢が続いた後、前面の第五艦隊の攻勢が僅かに衰えた。息切れか、或いはこれ以上此処にいることが不安になったか、どちらにしても反転攻勢をかける時だ。

「敵は攻勢の限界に達した。反撃に出る。全艦攻撃せよ!」
俺の号令に艦隊は整然と反撃を開始した。第五艦隊は僅かずつ後退する。それにつられるように味方は前進した。

何度か小競り合いのような一進一退があった後、崩れるかのように敵が後退を始めた。一瞬で敵との距離が開く。味方は引きずられるように前進し始めた。

「全艦に命令、前進を止めろ、両翼を見ろ、包囲されるぞ」
俺の命令に、オペレータ達が慌てて艦隊に命令を伝えている。それと共に艦隊の前進速度が落ちた。

敵の第五、第十艦隊は後退しているが、第十二、第十三艦隊は攻め込んだままの状態を維持している。敵は凹陣を形成している。今第五艦隊を追えば第五艦隊に頭を抑えられ、第十二艦隊に横腹を突かれるだろう。

メルカッツ提督の艦隊も動けずにいる。おそらくは撤退するための陣形に違いない。しかしこれだけの敵だ、うかつに入り込めば袋叩きにされるだろう。突破できればいいが、先ず無理な話だ。

敵は徐々に後退していく。ミュラー、ロイエンタール、ミッターマイヤーの艦隊が敵の両翼に攻撃をかけるが、敵は崩れることなく、整然と後退していく。このままか、このまま逃がしてしまうのか……。



宇宙暦796年8月19日   4:00 第五艦隊旗艦リオ・グランデ アレクサンドル・ビュコック


今のところ撤退行動は上手く行きつつある。敵の中央は追ってこられずにいるようじゃ。敵を全力で押し、こちらの力を見せつけた後で凹陣を敷いて撤退する。もちろん突破できればそれに越した事は無いが先ず無理じゃろう。

ある程度距離を稼いだら急速後退し、方向を変え別働隊の後ろを衝く。あるいはその動きを見せる。上手く行けば左翼部隊を少しじゃが助ける事が出来るはずじゃ。当然追撃は厳しいものになるじゃろうが、全滅するよりはましじゃ。

「閣下! 左方向に新たな敵です! 第十二艦隊に向かっています!」
「なんじゃと!」

オペレータの声に慌てて戦術コンピュータの擬似戦場モデル、そしてスクリーンを見た。そこには黒一色の艦隊が猛然と第十二艦隊目指して突き進んで来る姿がある。艦橋が凍りついた。

「ボロディン……」
思わず、呻く様な声が出た。それと時を同じくして敵が攻撃を仕掛けてくる。火球が第十二艦隊を襲い、艦列が崩れる。凹陣が崩れた、次に来るものは……。一瞬だけ眼をきつく閉じた。

「前面の敵、攻撃をかけてきます!」
オペレータが悲鳴のような声を上げる。やはり来たか……。第十二艦隊の乱れを見た前面の敵が攻勢をかけてくる。ようやく死線を脱したかと
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