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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十一話 シャンタウ星域の会戦 (その3)
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椅子から立ち上がり、顔を背けるように歩き出す。

「閣下、どちらに行かれるのです?」
「わ、私は、部屋で休む、後は総参謀長に頼む」
こちらを見ることも無く背を丸めて逃げるような姿に思わず怒声が出た。

「それでも総司令官ですか! 総司令官なら最後まで兵に対する責任を果たしてください! 誰が彼らを死地に追い込んだのです!」
ドーソン総司令官は私の怒声から逃げるように部屋を出て行った。

部屋を見渡すと他にも逃げ出したそうな顔をしている人間がいる。いつからこの国は無責任な人間の集まる国になった?
「遠征軍に撤退命令をだせ!」
怒りの所為だろう。思わず声がきつくなった。私の命令とともに固まっていた参謀たちが動き出す。

しばらくして部屋に入ってきた人間がいた。後方主任参謀、アレックス・キャゼルヌ少将だ、部下を連れている。彼はシトレ元帥の副官だった事、ヤン中将と親しい事もあって総司令部の中でも冷遇されていた。

後方支援任務用に部屋を貰い仕事をしていたが、何のことは無い、総司令部へ出来るだけ居るなと言われたようなものだった。もっとも本人はまるで気にしていなかったが。

「総参謀長、遠征軍が酷い状況になっていると聞きましたが?」
「見ての通りだ」
「これは!」

キャゼルヌ少将はスクリーンを見て一瞬唖然としたが、気を取り直して問いかけてきた。
「総参謀長、撤退命令は?」
「先程出した」

「それは補給部隊にもですか?」
「いや、そちらには未だ出していない。ボーデンに居るのだったな」
「?」

キャゼルヌは訝しげな表情でこちらを見る。まさか……。
「違うのか、私はボーデンに居ると思ったのだが」
確かシャンタウ星域の安全を確保してから動くはずだ。

キャゼルヌの顔に憐憫とも言える表情が浮かんだ。どうやら私は総司令部の中で情報一つまともに与えられなかったようだ。

「四日前にボーデンを出ています。後二日もすれば補給部隊はヴィーレンシュタイン星域に到達します」
「馬鹿な」

シャンタウ星域からヴィーレンシュタインは五日もあれば着く。帝国軍が勢いに乗って攻めてくれば補給部隊はあっという間に拿捕されてしまう。何故そんな急ぐ必要があったのだ。

「護衛艦はつけて有るのか」
「三十隻ほどつけてあります」
「三十隻?」

「小官も足りないと言いました。しかし」
そう言うとキャゼルヌは蹲ったままのフォークを見下ろした。私も思わず彼と同じものを見る。

フォークはキャゼルヌが連れてきた壮年の男に診察を受けている。どうやらキャゼルヌの部下ではなく、軍医だったようだ。たまたま一緒になったのか……。

私達の視線を感じたのだろう軍医が立ち上がって名乗った。ヤマムラ軍医少佐、彼の言う所ではフォーク准将
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