巻ノ四十七 瀬戸内その十
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「御前さん達は酔わぬ」
「そこまで身体は弱くない」
「だからか」
「酔わぬ」
「そうだというのだな」
「ああ、いい身体をしてるさ」
見ただけでもわかるまでにというのだ。
「船酔いどこの鍛錬を積んできていないってことだ」
「ならよいがな」
「ではこのままか」
「昼も夜も海を進み」
「そうしてか」
「博多に向かう」
「そうするんだな」
「そうだ、急ぐからな」
その船足はというのだ。
「すぐに着くさ」
「うむ、わかった」
「それではな」
「博多まで頼む」
「宜しくな」
十勇士達もそれぞれ言う、そして。
彼等も景色を見た、そこで言うことは。
「よいのう、海は」
「全くだ」
「普段山ばかり見ておるがな」
「海もよい」
「実には」
「奇麗なものだ」
こう言うのだった。
「大坂でも駿河でも相模でも北陸でも見たが」
「結構見ているじゃねえか」
「いや、普段は上田におる」
信濃の、というのだ。
「だからな」
「馴染みはないっていうんだ」
「御主達の様に海の中で生きている訳ではない」
「そういうことか」
「うむ、ただ水練はしておる」
そちらの修行はというのだ。
「泳げる時は毎日な」
「泳いでるんだな」
「春から秋までな」
「それはいい、ただ冬はな」
「水には入られぬな」
「それはここでも同じさ」
この瀬戸内でもというのだ。
「冬に海に入ったら死ぬぜ」
「凍え死ぬな」
「心の臓が止まってな」
その凍えのせいでだ、心の臓が止まってしまうのだ。そうなってしまってはもう死ぬしかないということである。
「そうなってしまうからな」
「では冬に海で戦があればな」
「海に落ちるなよ」
「他の季節の時以上に」
「本当に死ぬからな」
だからというのだ。
「それだけでな」
「わかった、では気をつけておく」
「そうしなよ」
「わかった、拙者は海での戦は知らんが」
「海の戦はかなり違うぜ」
陸のそれとは、というのだ。
「船と船で戦うからな」
「そこが全く違うな」
「だからわし等もいる」
水軍の者達がというのだ。
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