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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十話 シャンタウ星域の会戦 (その2)
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「ローエングラム伯、待たせましたか?」
「いえ、問題は有りません、敵を挟撃できたのですから」
ヴァレンシュタイン司令長官は穏やかな表情で話しかけてきた。久しぶりに見るが穏やかな表情は少しも変わらない。この戦場にはなんとも似つかわしくない表情だ。
「挟撃している敵はもう終わりでしょう。この後は網を手繰り上げるように徐々に敵を包囲する形にしたいと思いますが」
網を手繰り上げるか、確かにそんな感じだな。
「分りました。小官にも異存は有りません」
「では、伯はこのままそちらの艦隊を指揮してください。私はこちらを指揮します」
俺にこのまま十一個艦隊を指揮させるのか?
「しかし、それは」
「目的が一致しているなら問題ないでしょう。その方が混乱が少なくてすみます。頼りにして良いですね、副司令長官」
「はっ」
妙な男だ、俺はいつか卿の上に行きたいと思っているのだぞ。その俺に十一個艦隊を預けるというのか。頼りにしていると? どうにも掴み切れない男だ。まだまだ及ばない、そういうことか……。
「副司令長官、敵を殲滅しますよ」
「! はっ」
穏やかな表情とは似つかわしくない言葉。確かに目の前に居るのはヴァレンシュタイン司令長官だ。
敬礼と共にスクリーンからヴァレンシュタイン司令長官の姿が消える。
「オペレータ、全艦に命令。敵を殲滅せよ!」
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