7部分:第七章
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第七章
「そこにね」
「この病院の屋上かよ」
「そうだよ。そこだよ」
まさにそこだというのだ。
「それでいいね」
「ああ。それにしてもな」
「何だっていうんだね」
「若しかして喧嘩か?」
少し笑ってだ。蒼汰はベッドに座ったままで藍に問い返した。
「怪我がなおったところだからそれだと不利だな」
「そう思うなら思うといいさ」
「女とは喧嘩しない主義ってことは言っておくぜ」
蒼汰はその笑みでこう藍に言う。
「それはな」
「漢なのかい?」
「そうなりたいと思ってはいるさ」
「いいねえ。その心意気」
藍もだ。彼のそうした言葉を聞いてだ。こう返した。
「余計にだね」
「余計に?」
「まあ来てくれるない?その屋上にね」
「ああ、そうさせてもらうな」
何はともあれだ。蒼汰は藍のその申し出を受けてだ。そのうえでだった。
屋上に出た。青い空が広がるそのコンクリートの屋上でだ。藍は蒼汰に背を向けてだ。そうしてそのうえでこう彼に言ってきたのである。
「それで話だけれどね」
「ああ、何だ?」
「あんた今付き合ってる奴とかいるのかい?」
「彼女かよ」
「ああ。いるかい?」
このことをだ。彼に背を向けたまま問うのだった。白衣の背を向けたまま。
「そっちはどうなんだい?」
「今はいないさ」
その彼女にだ。蒼汰は素直に述べた。
「残念だけれどな」
「そうかい。いないのかい」
「欲しいけれどいないさ」
「成程ね。わかったよ」
「二人でバイクをかっ飛ばせる奴が欲しいところさ」
「そういう奴なら一人知ってるよ」
バイクと聞いてだ。藍はこう返した。背中を向けたまま腕を組んでいる。その姿勢でだ。彼女は蒼汰に対してだ。言葉を返したのである。
「そいつを紹介しようかい?」
「できたらな。それで今そいつは何処にいるんだい?」
「あたしだよ」
こう言ってだ。藍は振り向いてみせた。そのうえで相手を見るのだった。
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