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白衣の天使
5部分:第五章
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第五章

「あいつとは絶対にね」
「決着をつけるんですね」
「勝負ですか」
「人生ってのは勝負なんだよ」
 またヤンキーの顔で言う藍だった。咥え煙草が似合いそうだ。
「一気にやるからな」
「じゃあ頑張って下さいね」
「これからも」
 藍は蒼汰の相手を続けた。あくまでナースと患者としてだ。だがその応対はだ。如何にも藍というものでだ。随分蓮っ葉な感じだった。
 リハビリで手すりを掴みながら歩く彼にだ。こう言ったのである。
「まだまだだね」
「足りないっていうのか?」
「もっと前を向いて歩くんだよ」
 こう彼に言ったのである。
「顎をあげてね」
「顎をか」
「そうさ。もっとね」 
 手すりは部屋の中央に二つ並んで置かれている。蒼汰はその間を通る形で掴まって歩いている。それが彼のリハビリなのである。
 それをしている彼の傍に立ってだ。藍は言ったのである。
「顎をあげて前を向いてね」
「そうしないと駄目なんだな」
「歩くのは前を見て歩くだろ」
「ああ」
 そのことには確かな顔で頷いて答える蒼汰だった。
「俯いて歩くものじゃないな」
「そうだろ?だから前を向いて歩くんだよ」
 藍はこう言ってだ。そしてだ。 
 蒼汰にだ。今度はこう告げた。
「若し転びそうになってもね」
「そうなっても。何だ?」
「あたしがいるからね」
「看護婦さんがか」
「そうさ。あたしが支えてやるよ」
 これが今蒼汰に告げる言葉だった。
「いいね。大丈夫だからね」
「悪いな」
「御礼なんていいよ」
 強い目でだ。藍は答えた。
「いいかい?今はリハビリに専念するんだよ」
「ああ、それじゃあな」
 蒼汰も藍のその言葉に頷いてだ。そのうえでだ。
 彼はリハビリを続けた。その横にはいつも藍がいた。
 リハビリはだ。彼の担当の医師も予想しない程順調でだ。笑顔で藍に話した。
「いや、君が頑張ってるからだね」
「あたしは何もしてませんよ」
 態度はともかくだ。一応真面目な口調の彼だった。
「別にね」
「そうなのか?いつも一緒にいるじゃないか」
「けれど見てるだけですから」
「そうなのかい?」
「そうですよ。あいつが自分で頑張ってるだけですから」
「けれど実は違うとかじゃないのかな」
 医師は笑ってだ。こう藍に返した。
「君の献身的な介護とかじゃ」
「漫画じゃないんですから」
 少し視線を泳がせたがすぐにこう返す藍だった。
「そんなのはないですよ」
「そうか。じゃあ別に何もないんだね」
「はい、あの患者が頑張ってるだけですから」
 こう医師には話す。控え室に来たその医師に。
「それだけですよ」
「そうなんだな」
「はい、それだけですから」
 こんな話もするのだった。そして蒼汰の退院の日が
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