彼女達の結末
幕間 三
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てくれた人が居る。優しい人が居る。心を殺し切れない人が居る。人達が居る。
この街は。この国は。確かに、邪法に手を染めた。けれど、けれども。
「私が、何を思ってこうなったかなんて、知らない癖にッ!」
腐り切れなかった。感情を捨てられなかった。攻めることさえ出来ず、身を寄せ合って生きてきた。軍備は、研究は……全ては、守るためだった。
だから、守りたいと思ったのだ。愛し愛されながらも戦いに赴いた若者達を。そんな犠牲に泣いた老人達を。残された子供達を。世界を知らず笑う赤子達を。
この街の、全てを。
「……絶対に、許さない。お前達さえ、お前達さえ居なければ……」
空気が張り詰める。立ち昇るように輝き始めた緑光と、部品が剥がれ、砕け始めた車椅子。無機質な部屋、硬質の床、壁。弾け始めた金属片がぶつかり、響き、鼓膜を揺らし。
向けられた銃口と吐き出された弾丸は、けれど、彼女に届く事無く傍を逸れていく。
「許さない。絶対に、許さない。此処から……この街から」
出て行け、と。言葉は、彼等の耳へと届く前に崩壊の音に掻き消され。血液が爆ぜ肉が飛び散り、砕けた骨が空を掻く。この街を滅亡へと追いやらんとした者たち、この街に巣食い続けた悪意。週末の引き金、それを引いた者たちの最後は、余りに呆気なく。
しかし、まだ終わっていない。
「ネクロマンサー……どうにか、しないと……」
強力なESP、それを行使した事による目眩、吐き気、強烈な眠気。そんな中でもアリスは、ふらつき、自身の苦痛を引き起こすそれ、超常の力の助力を借りて、歩み寄り。
手を付く。操作などした事も無ければ、その方法さえ分からない。只、眼前に聳え立つ巨大な機械、ネクロマンサーと呼ばれた……元来は死体操作術、ネクロマンシーを用いる技術者、研究者へと送られる呼称。それを冠するこの機械は、正しく、この国、街の保有する死体操作術の結晶、中核であって。
モニターに映るのは過剰に生産されるアンデッド達。その異形を、アリスは知識として知っていた。
低い知能しか持たず、本能に従い捕食を行うアンデッド、グール。守るためのアンデッドではない。積極的に人を襲う、都市を、街を壊滅させる。それを目的としたアンデッド生産……肉片と化した彼らがやろうとしていたのは、ネクロマンサーを利用した内部からの破壊工作。
止めなければならない。変えなければならない。今必要なのは、侵入した虫達を掃討する為の兵器だ。成功するかどうかなんて、分からない。それでも、それしか、歩める道は残っていない。
必死に蓄えたこの力は、この街を救う為だけに。ならば、今こそ。今この時こそ、応えて欲しい。応えて欲しいと。
「お願い……お願い……っ……」
翳した手から、光が溢れる
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