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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九話 シャンタウ星域の会戦 (その1)
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ルシュタインも黙って戦況を見ている。戦況は今の所こちらの思い通りだ。心配する事は何もない。あとは反乱軍を挟撃し、撃滅するだけだ。



宇宙暦796年8月18日  21:00 第五艦隊旗艦リオ・グランデ アレクサンドル・ビュコック


「閣下、総司令部から命令です」
「うむ」
ファイフェル少佐が緊張した様子で総司令部からの電文を持って来た。どうせ碌な物ではあるまい。

「前進して敵の左翼を攻撃せよ、か」
おそらく第五艦隊だけではあるまい。第十、第十二、第十三にも同様な命令が出ているじゃろう。

総司令部の意図はわしらが敵を崩す事で全面攻勢に出ると言うことか。おそらく左翼には無理はするなとでも命令が出とるじゃろう。わしらがここで戦力を枯渇しても構わん、別働隊は温存した左翼部隊で撃つ、そんなところじゃな。

随分と嫌われたものじゃ。しかし、総司令部の思うとおりに行くかどうか……。とは言っても命令は命令じゃ、動くとするか。
「全艦に命令。二時の方向に主砲斉射、艦隊を前進させよ」


帝国暦 487年8月18日  21:00 帝国軍 クレメンツ艦隊旗艦ビフレスト アルベルト・クレメンツ


敵の第五艦隊が攻勢に出てきた。いや、第五艦隊だけではない。敵右翼が攻勢を強めている。第五艦隊はこちらとメルカッツ提督の間を分断しようとしている。甘く見るなよ、ご老人。

「全艦に命令。敵の先頭部分に砲撃を集中しろ」
俺の命令に従い敵の先頭に攻撃が集中する。しかし敵は退かない! 損害を受けつつも前進してくる。戦意が高い! 流石というべきか。

感心してもいられない。敵がこちらを分断するというなら、メルカッツ提督と連携して、分断される前に第五艦隊を左右から叩くしかあるまい。メルカッツ提督に連絡を入れるか……。

突然敵の艦列が崩れた。メルカッツ提督の艦隊の一部が敵の第五艦隊に攻撃をかけている。決して大規模な攻撃ではない、しかし実に効果的だ。こちらが連絡する前に手を打たれたか、流石だ。

「今だ、全艦に命令、敵を押し返せ」
敵に対し、攻撃を集中する。だが敵は後退しつつも嫌らしいほど柔軟に陣形を変え反撃の機会を狙っている。帝国も反乱軍も老人はしぶとい。



帝国暦 487年8月19日  0:00 帝国軍 ローエングラム艦隊旗艦ブリュンヒルト  ラインハルト・フォン・ローエングラム


戦況は膠着状態になりつつある。先程まで敵右翼の攻勢が激しかった。敵の第五、第十、第十二、第十三が全面的に攻勢をかけてきた。しかも連携が良い、流石に敵の精鋭部隊と言って良いだろう。なんとも激しい攻撃だったが、なんとか凌ぎきった。

メルカッツ、クレメンツ、ミュラーの三人が実に良く連携し敵の攻勢を防ぎきった。三人とも良く周りを
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