第一章
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ミシャナナ
ルワンダ人の名前は名前とクリスチャンの洗礼名の二つから成ることが多い、これはこの国がキリスト教徒が多いからだ。
それはドール=ミカエルも同じだ、ルワンダのある小さな村で農業を営んでいる家にいて日々汗を流している。
彼にとっては変わり映えしない日々を送っている、だが。
祖父のンジャガ=ガブリエルは時々だ、畑を耕しつつ彼にこう言うのだった。
「この村も変わったぞ」
「そうなんだ」
「ああ、御前はまだ生まれて十五年か」
「そうだよ」
「それならわからないな」
「この村でも色々あったんだ」
「あったさ、それこそ」
まさにというのだ。
「戦争もあったしな」
「とんでもない戦争だったんだね」
「この村はそれから逃れられたけれど」
直接被害はなかったというのだ。
「けれど逃げてきた人がな」
ンジャガはまだ十五歳だが自分より十センチ以上背の高い孫を見つつ言う。面長で丸い目と縮れた短い黒髪は自分の血だ。息子から受け継がれているものだ。
「来てな」
「人も増えたんだ」
「ああ、そうなった」
実際にというのだ。
「畑も開墾してな」
「昔は畑ももっと少なかったんだ」
「ずっとな、とにかくな」
「この村も変わったんだね」
「御前が生まれる前と比べたらな」
その昔見た景色を思い出しながらの言葉だ。
「この村は直接関係なかったが無茶苦茶な戦争だった」
「沢山の人が殺された」
「あっという間に百万殺されたんだ」
だから正確には内戦というよりかは虐殺だった、ルワンダの虐殺は全世界が驚愕している間に起こった。
「それこそな」
「百万って」
「想像がつかないか」
「どれだけか」
それこそと言うのだった。
「わからないな」
「そうか、御前はか」
「百万って言われても」
それこそだ。
「わからないよ」
「この村が二百あってもな」
「まだ足りないんだ」
「それ位の人間が殺された」
「とんでもない戦争だったんだね」
「その戦争から逃げた人がな」
この村に入ってというのだ。
「住んでな」
「そういえば学校にも友達のお父さんやお母さんに外から来た人多いよ」
「そうだろ、人が増えて畑も増えてな」
「村も変わったんだね」
「あと家も立派になった」
昔と比べてというのだ。
「それに服もな」
「ああ、服はね」
そう言われるとだ、ドールもわかった。
「ミシャナナがね」
「なくなったからな」
「おいらも祖父ちゃんも洋服だね」
「そうだろ、祖母さんも若い時はあの服を着ていた」
そのミシャナナをというのだ。
「今じゃ祖母さんも洋服だがな」
「昔はミシャナナだったんだね、祖母ちゃんも」
「そうだったんだ、御前はミシャナナ
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