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SAO−銀ノ月−
第短編話 三
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買ってきた天罰なのです、いい気味です、ご主人には私以上の日本刀など存在しないのです。

「……もう。店の倉庫がいっぱいなのは確かだから、ストレージで処理してよね」

 もっと怒られてしまえばいい、と思っていたにもかかわらず、あの人の追求はそこで終わってしまいます。基本的にご主人よりあの人の方が優位に立っている筈なのに、最終的にはいつもあの人が折れてしまう、という私からすると不思議な関係です。母とも呼べる人に言うのもなんですが、アレが噂のダメンズ好きというものでしょうか。

「……でもショウキ。そのカタナ、どうやればそんな刃紋が浮かぶのかしら」

 しかも、どうやらあの人も、あちらの日本刀に興味を惹かれたようです。ご主人が掴むあの日本刀の刃紋を、自らでも再現が出来ないか眺めており、その様子をご主人が幸せそうに眺めています。

 ……そんな二人の関係性自体は、私も嫌いではありません。そうしていると、あの人が日本刀を眺めるのを止めて、私がいる台の方に歩いてきます。

「おっと、そんなことより! クエスト行く約束してたじゃない。ほら、メンテしておいてあげたから!」

 そうしてあの人が、台に乗っていた私のことを掴み上げました。それは本当に母のような慈愛に満ちた手で、最初の作りたての頃は重量に振り回されていたのを、わざわざ私のために筋力値をあげてくれたのだと推測出来ます。

「悪いな。メンテナンスぐらいなら俺がやるのに」

 そんなことを言いながら、ご主人は買ってきた日本刀をストレージとかいう、私もたまにしまわれる場所に収納しました。やはり私以上の日本刀はないようですね――などと優越感が私の全身を駆け巡っていくのを感じていると、あの人がこちらに気づいたように笑いました。

「何言ってんの。それぐらいは任せときなさいって!」

 いえ、どうやらご主人に笑いかけたようでした。そして私はあの人からご主人に手渡されていき、まずは重さや手触りを確かめるように触られます。そんなことをせずとも、私はいつでもご主人の手に合うように、私自らを最適化しているというのに。

 ……そもそも、私を造り上げた母のような人物を、『あの人』などと他人行儀な呼び方で呼んでしまうのも、このご主人のせいなのです。何故ならあの人を母だと一度でも呼んでしまえば、当然ながら父は――となってしまいます。

 ……そんな呼び方、恥ずかしくてたまりません。私以外の日本刀を買ってきたり、私の扱いが雑なご主人には、様を付ける必要はなくご主人で充分なのです。それを重々承知して反省し、私だけを見ているのであれば、ご主人様と呼ぶのもやぶさかではないのですが。

「よし……」

 そしてご主人は、メンテナンスされた私に満足した様子ですが、私としてはやはり怒りを覚えます
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