暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第短編話 三
[3/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
から興味なさげな「あー」という思い出したような声が聞こえてきて、せっかくだからこの話題を続けていく。

「あんた、本当に何かないの?」

「ゲーム、って言えばゲームだけどな……」

 あたしが振り下ろすハンマーの音をバックに、彼の困ったような声が返ってきていた。どうやら趣味についても、鞘についても、何やら決めかねているようで。ふと、こんなことを提案してみた。

「じゃあさ、二人で何か始めない? …… あ、現実でよ?」

 このALOでやってたら、また『趣味はゲーム』になっちゃうものね――そんなふうに冗談めかして言ってみると、思いの外彼にはウケがよかったらしく、肩がプルプルと震えているのが見て取れる。

「わたっ!?」

 彼を愛おしげに見ていてインゴットを蔑ろにした罰か、インゴットではなく金床にハンマーを叩きつけてしまい、破壊不可能オブジェクトを叩いた衝撃が身体にも伝わった。驚いて変な声が出てしまった口を、反射的に抑えたはいいものの。

「インゴットちゃんと見て叩けよ」

「むぅ……」

 時すでに遅く。彼からは、やれやれ――といった声色の声が届く。不満げに呟きながらも、今度はしっかりと金床のハンマーを見据えると、八つ当たりを込めた一撃を放つ。元はといえば、このインゴットがなかなか武器にならないから悪いのだ、と。

「……あ、そうそう。二人で出来る趣味って何かしらね」

 また忘れるところだった。今度はちゃんとインゴットを叩きながら聞くと、彼から気の抜けた返事が聞こえてきた。

「あー……ドミノ倒し?」

「それはそれで、もうちょっと皆でやりましょうか……」

 確かに楽しそうではあるが、それは二人でやる遊びではない気もする。今度、このお店でやってみようかしら、とあたしは思案しておくと。どうやら、カタナ二本のうち一本の鞘を見繕い終わったらしい、彼からこんな提案がなされた。

「リズは何かないか? 言い出しっぺ」

「んー……」

 あまりにもインゴットが武器にならないので、発動している鍛冶スキルを変更しながら。彼から問いかけられた質問に、しばしスキルのクールタイムついでに考えておく。

「……ジャグリング?」

「……独創的だな」

 何故かパッと頭に浮かんだのは、二人で軽いハンマー型の物を幾つも投げ合って、それを二人で広い合うというスポーツで。自分で言っておいてなんだが、あまり惹かれなかった。

「パ、パッと浮かんだのがそれだったのよ!」

「パッと……パッと……あ、サイクリングなんてどうだ?」

 本日何度目になるか分からない金属音とともに、彼からなかなか魅力的な提案がなされていた。サイクリング――と言えば、どこか景色のよいところに、ちょうどいい運動しながら
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ