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手の平に書く文字
第一章
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                          手の平に書く文字
 デート雑誌を読んでいた。そしてファッション雑誌もだ。
 そうした雑誌をクラスで必死に読みながらだ。女の子達は言うのだった。
「何かねえ」
「これといったことがないわよね」
「そうよね。何が一番いいっていうのは」
「わからないけれど」
「困ったわね」
 こうだ。一つの席を囲んでだ。女の子達は話していく。
「何かどの雑誌も結構適当なこと書いてない?」
「同じことも書いていれば違うこと書いていたりするし」
「雑誌によってね」
「これじゃあどれが一番いいのかね」
「わからないわよね」
「そうね」
 女の子達の中にいるだ。黒のロングヘアで静かな目の女の子が言う。少し澄ました感じの顔で表情は見られない。体型はすらりとしている。
 その娘がだ。静かに言ったのである。
「どの雑誌もこれじゃあ」
「デートの仕方もファッションもそれぞれね」
「何ていうかこれじゃあ」
「どれにしたらいいかわからないっていうか」
「どうしたらいいのよ、具体的に」
「何が一番いいのか」
「確かにそうだけれど」
 そのロングヘアの娘はだ。淡々と述べていく。その雑誌達を手にして。
「それでも。参考になるわ」
「参考になってもどればベストかってわからないじゃない」
「暁美はそれでもいいの?」
「ベストがわからないのに」
「ベストは見極めるものだから」
 この少女斉藤暁美はこう言ったのだった。友人達に。
「こうして参考にしていって」
「参考になるだけじゃないの?」
 女の子の一人が暁美に問い返した。
「それだけじゃちょっと」
「そうよね。だから今こうしてお話してるんだし」
「参考になるだけじゃちょっと」
「何ていうか」
「大丈夫だから」
 暁美はまた言う。
「参考になるだけも大きいし雑誌だけじゃないから」
「ああ、インターネットよね」
「それもなのね」
「そう。それとケースバイケース」
 暁美はこの言葉も話に出した。
「それも大事だから」
「ケースバイケースねえ」
「まあ私達今誰も彼氏いないしね」
「その前の段階の話だし」
 見ればだ。雑誌の中には彼氏の作り方について書かれているものもあった。女の子向けの雑誌ばかりだがだ。その中にあったのである。
 その雑誌達を見つつだ。暁美は言っていく。
「その彼氏の見つけ方も」
「それも?」
「ケースバイケースなのね」
「まずは勉強して」
 そしてだった。
「いい人を見つけることだから」
「その相手を見つけたらそれこそなのね」
「勉強を活かす」
「そうするのね」

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