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忘れ形見の孫娘たち
8.鈴谷は仲間はずれ
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「そんな! 頭を上げてください!! 僕はそんな……そんなつもりは……ただ鈴谷と軽口を叩き合ってただけですから……だから頭を上げてくださいよ!!」
「それが鈴谷には必要だったんですよきっと」
「いやわかんないです! ホント僕は軽口叩き合ってただけなんで!!」

 そらぁ確かに? スイカの種見つけてつい悪態ついたりしましたよ? 寝入り端を鈴谷のLINEで邪魔されていらついてぶん投げたスマホが鈴谷のムカつく笑顔に見えたりしましたし?

「昨日だって僕が焼いた肉をひたすら強奪されてムカついたりしましたよ? だから……」
「和之、うろたえすぎだ」
「う……」
「くすっ……何はともあれ、鈴谷はよい友人を持ったようですね」
「だな」

 ちくしょう……なんだか年上の女性二人に翻弄されてるようですごく恥ずかしい……ちくしょう全部鈴谷のせいだ。アイツを明日どうしてくれよう……

「和之、酒は飲めんのか?」

 我が家に来てからこっち、キッとした眼差しが多かった那智さんの顔が柔らかくなった。サイドテールの綺麗な髪が揺れ、僕の注意を誘ってきた。

「少しなら飲めなくはないです」
「なら、私のダルマを飲んでくれないか」

 那智さんは柔らかな笑顔でそう言うと、自身のすぐそばに置いてあったサントリーオールド……ダルマのボトルを持ち、それを僕に向けた。僕はウイスキーは苦手だ。だけど那智さんのこのダルマは、断ってはいけない気がした。

「じゃあちょっと待ってください。僕もグラスを出します」
「ああ」

 僕は一度台所に向かい、那智さんに渡したグラスと同じものを持ってきた。そしてそのグラスを那智さんに向け、那智さんはそれにダルマを注いでくれた。

「和之。本当にありがとう。このダルマは、姉さんと私……そして鈴谷を心配しているみんなからの礼だと思ってくれ」

 指一本分の量がグラスに注がれる。琥珀色のダルマは本当に美しく、ウイスキー特有の良い香りがした。こんなにも美しいウイスキーを飲んでしまうのはもったいないとすら思えるほどに、ダルマは美しかった。

「那智さん、妙高さん、ありがたくいただきます」
「ああ」
「はい」

 那智さんのダルマに口をつける。ほんの少し感じる甘みの後、アルコール度数が高い酒特有の刺激が僕の喉に走り、そしてウイスキー特有のいい香りが僕の鼻を駆け抜けていった。

「くあっ……」
「どうだ?」
「アルコールがキツいです 。でも甘い……いい香りで飲みやすい」
「そらそうだ。私達みんなの感謝がこもったダルマだからな」
「ですね。甘さも香りも、私たちの感謝の印だと思ってください」
「はい……けふっ……」

 これが感謝の味か……その割には、なぜ喉への刺激がこんなに強いんだろう……。


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