8.鈴谷は仲間はずれ
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砕いているのだとしたら……頭が真っ赤に染まっていく。そんな奴がいるなら僕は許さない。
「和之さん落ち着いて。私たちはそんなことはしていません」
「そうだ。話は最後まで聞かんか」
僕の様子に気付いたのか、妙高さんが静かに僕を窘め、那智さんも僕を諌めてくれた。幾分落ち着きを取り戻した僕は、お茶をすすり、ほっと一息つく。一度頭を冷静にするために。
……一息ついて冷静になって考えてみると……確かに仲良くないとこうやって毎日みんなと一緒に平気でこっちに来るなんて出来るわけないよな。
「……すみません」
「構いませんよ。逆に和之さんの人となりを知れましたし、あなたが鈴谷を大切にしてくれてるってこともわかりました」
「そういうことだ。だから貴様も気にするな」
そっか。そう捉えてくれてよかった。安心した。……いや、ちょっと待て。僕が鈴谷を大切にしてるだと?
「話を戻そう。鈴谷は今まで、私達と打ち解けることができてなかった」
「どういうことですか?」
那智さんと妙高さんは、鈴谷の事情を代わる代わる話してくれた。
鈴谷は、爺様が亡くなる前日に爺様の元にやってきた子だったらしい。鈴谷が来て次の日の翌朝、ひこざえもん提督……つまり爺様は亡くなり、鈴谷たちの前に姿を見せなくなった。
妙高さんや那智さんたちは爺様との付き合いが長い。付き合いの長い親しい人が、ある日突然消息を絶って自分たちの前に姿を見せなくなったら、人は不安になり、うろたえる。自分が悪いことをしたのではないかと落ち込み、場合によっては相手に対する怒りがこみ上げてくる。とても平常心ではいられなくなる。
「だからひこざえもん提督が来なくなったことで、私たちの間には少なからず動揺が走りました。何か私達と会えない事情が出来たのか……それとも単純に私たちが嫌われたか……原因がわからず、私達は混乱するばかりでした。……鈴谷以外は」
「あぁ……なるほど」
鈴谷には爺様との思い出がない。親交を深めるための共有する時間がない。仲間たちが爺様への不安に打ちひしがれ混乱している時、彼女はたった一人、置いてけぼりを食らっていた。仲間の動揺に共感出来ず、周囲の困惑と混乱に取り残されてしまった。
「もちろん鈴谷はあんな性格だから、表面上はみんなと仲良くやっていた。私たちも決して鈴谷を邪険に扱っていたわけではない。仲良く出来てはいた。表面上は」
「……」
「……ただ、私たちは配慮が出来なかった。ひこざえもん提督不在という事態に平静を保つのが精一杯で、新しく来たばかりの鈴谷への配慮が足りなかった。だから鈴谷は、私たちの悲しみに共感出来ない自分と私たちの間に、いつからか一線を引くようになったようだった」
妙高さんたちが鈴谷のことを悪く思ってないのは
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