8.鈴谷は仲間はずれ
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?」
「大丈夫だ。姉さんの煮物がある」
「ですね」
沸騰したら急須にお湯を注ぎ、急須と湯のみ、そして那智さん用の氷と水を運んだ。妙高さんはお礼を言いつつ僕から急須と湯のみを受け取ると、実に美しい所作でお茶を湯のみに注いでいく……うーん……なんかベテラン秘書のような安定感がある。那智さんは那智さんで、グラスに氷を入れてダルマを注ぎ、静かに水を注いでいた。冷たい水と氷のおかげでグラスはすぐに汗をかき、中ではダルマと水がグラデーションがかかったように分離していて、それがとても綺麗だった。
「では改めて、乾杯」
「かんぱーい」
「乾杯」
こうして、先程までの賑やかな宴会とは違った三人だけの静かな飲み会が幕を開けた。
僕は妙高さんの煮物に箸を伸ばし、改めて味を堪能した。この妙高さん作の煮物、母ちゃんの煮物の面影を残しつつキチンと妙高オリジナルな部分もあったりして、とても美味しい。
「やっぱり習ってみた甲斐がありましたね。ありがとうございます」
「いや姉さん、この煮物は本当に絶品だ」
「ですね。とても美味しいですよ妙高さん。母も喜びます」
「あまり褒めないでください……照れます」
確実に酒が原因ではないほっぺたの紅潮を見る限り、妙高さんは褒められているのがとても恥ずかしいようだ。
「……で、話ってなんですか?」
「ええ。実は私達、ひこざえもん提督にお別れを言うためだけにここに来たのではないのです」
「へ?」
なんか前回も聞いたようなセリフが……デジャヴってわけじゃないよねぇ?
「私たちは、貴様に礼を言うために来た」
「? お礼って何かしましたっけ?」
はて……何かイイことでもしましたっけ? みんなの挨拶に関することなら一度お礼は言ってもらってるし……なんてのんきに考えていたら、次の那智さんの言葉は、僕の胸を不快にさせる一言だった。
「鈴谷は、仲間と打ち解けられてなかった。仲間はずれと言ってもいい」
僕の脳裏に……見ていて本人の楽しさがこっちにも伝わってくるような、鈴谷のムカつく満面の笑みが浮かんだ。そしてその笑みは、石を勢い良くぶつけられたガラスのようにひび割れ、粉々に砕け散った。その石を投げたと思しき姿がはっきりしないヤツらは、鈴谷の砕けた笑顔を見て、クスクスとほくそ笑んでいた。
「那智さんどういうことですか?」
「実は鈴谷は……」
「まさかとは思いますけど、わざと仲間内で仲間はずれにしたりしてるわけじゃないですよね?」
「いや、そうではない」
「んじゃなんすか? まさかいじめですか? いじめでも起こってるんですか? 誰ですか? 張り倒しますよ?」
自分でも正直意味が分からない。でもどこかの誰かが、あの鈴谷の笑顔に石を投げつけ、ガラスのように
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