暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第20話『吹き渡る風』
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この状況を生涯で経験できるのは、恐らく1回きりだろう。そう思えるほど、現状は馬鹿げているものだった。


「と、戸部さん…これって…」

「ははは…夢か何かですかね…」


俺らを未だに見ている大熊。
どう考えても、俺らは生きて帰れないと思う。

アレが子供だったらまだマシだっただろう。
だがアレはどう見ても、さっきまで動物を喰い散らかしていた奴だ。口元の血痕がそれを物語る。


「こういう時って死んだフリだっけ?」


我ながら子供っぽい質問をしたとは思うが、今の事態に置いてこのことはとても大事な突破口だ。


「い、いえ、それはダメだったと思います。確か目を逸らさずに、ゆっくりと離れるとかが正解だったと・・・」


俺の問いに慌てながらも答える戸部さん。

いやいや、ゆっくり逃げてたら追いつかれない?!
大丈夫なのその案!?


「とにかく…やってみましょう」

「う、うん…」


しかし四の五の言ってはいられない。俺と戸部さんはその作戦を実行した。
熊は依然としてこちらを見ている。
だからなるべく、動いているかどうかもわかりにくいくらいのスピードで後ろに下がる・・・



「ひゃっ!!」ドテッ



・・ものの見事に、戸部さんがコケたことによって作戦が瓦解した。

尻餅をついてしまった戸部さんを「弱っている」と見たのか、熊がこちらにゆっくりと向かってきた。


「戸部さん! 捕まって!」


俺は戸部さんに手を差し伸べる。
ホントは無理矢理引っ張って行きたいのだが、熊の生態上それは無理だとわかった。
だからと言って、モタモタしてる暇はないのだが。


「ごめんなさい…」


俺を手を掴み、立ち上がった戸部さん。
怪我はしていないみたいなので一安心だ。ここで捻挫でもされてたら、本当に危なかった。
再び、俺たちは後ろに下がり始める。


だが既に奴は俺らの方に向かってきている。
奴とこちらでは、歩幅が圧倒的に俺らが不利。つまりはいずれ追いつかれる。そうなるとゲームオーバーだ。



もう俺は察していた。
あんな奴に立ち向かうには、銃などの武器、もしくは・・・


「俺の魔術・・・」


…しかないということを。

『銃』と考えると、部長の技を思い出した。
あれを使えば、もしかしたらアイツを倒せるかもしれない。
しかし、俺の魔術は不完全。使えるようにはなったみたいだが、発動条件は不明。完璧に“運ゲー”となっているのだ。

それでも俺は、戸部さんの前に立ち塞がるように立ち、大熊を見据えた。


「三浦君!?」


戸部さんは驚いた声を上げていた。自分でもこの行動は驚いた。
そりゃ
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