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リラの咲く頃バルセロナへ
第二章
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うなった彼女がだ。僕にふとこう言ってきた。
「あのね」
「ああ、どうしたんだよ」
 すっかり恰幅がよくなった僕は少し皺のできた顔の妻にだ。こう返した。
「何かあったのかい?」
「うん。ずっと忘れてたけれど」
 それでもだという感じでだ。妻は僕に言ってきた。
「あのね。旅行のことだけれど」
「旅行?」
「そう、旅行のこと覚えてるかしら」
「もう家族旅行は何年も行ってないじゃないか」
 妻に言われて思い浮かべた旅行はこれだった。夏休みに子供達を連れて海や山に行く。毎年やっていたけれど上の子の高校受験の年から自然になくなった。
 上の子は受験で頭が一杯で下の子はそれなら自分で行くと言って女友達と何人かのグループで旅行に行くようになった。それで僕達は旅行に行かなくなった。
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