第一章
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リラの咲く頃バルセロナへ
バルセロナ、そう聞いて僕はまずこう思った。
「確か昔オリンピックがあったね」
「あっ、覚えてるのね」
「よく覚えてるよ。子供の頃だったけれど」
あの派手なオリンピックのことは本当によく覚えていた。スペインという国自体が派手で明るいイメージがあるけれど特にあの開会式が凄かったのを覚えている。
どう派手だったのか。僕は彼女に実際に言った。
「ドミンゴとかカレーラスが出てさ」
「オペラ歌手よね」
「世界的なね。これでもドミンゴのCD結構持ってるからね」
実は僕はドミンゴのファンだ。テノールの声が好きだけれどドミンゴは特に好きだ。歌唱力だけでなく舞台姿も好きでDVDもかなり持っている。
そのドミンゴが出ていたからよく覚えていた。それで彼女に言ったのだ。
「だからね」
「ドミンゴね。けれど私がバルセロナに行きたいのはね」
「あれだよね。旅行だよね」
「そう、旅行よ」
それで行きたいとだ。彼女は言うのだった。
「一度スペインに行きたいと思ってたのよ」
「だからなんだ」
「闘牛も見たいし本場のフラメンコも見たいし」
「あとはスペインの食べ物も」
「イタリアには何度も行ってるわ」
目を輝かせて僕に言ってくる。彼女の趣味は旅行なのだ。国内だけでなく外国にもよく行く。それで今度はスペインに行くというのである。
「それで今度はね」
「スペインだね」
「行くわ。お金が貯まったら」
「行ってらっしゃい、って訳にはいかないわね」
「一緒に来てくれるわよね」
彼女は旅行に行くのは一人じゃない。いつも僕を連れて行く。幸い僕の職場と彼女の職場は一緒なので休みの都合がつけやすい。それでいつも一緒なのだ。
だからだ。ここで僕にこう言ってくるのだ。
「そうしてくれるわよね」
「いつも通りね。ただね」
「ただって?」
「何時行くのかな、バルセロナに」
僕が問題にしているのは行く時期だった。それによって受ける印象や楽しさが全く違うからだ。旅行は行く時期が大事でだ。その時期によってかなり違う。
それでだ。僕も彼女に尋ねたのだ。
「何時にするんだい?」
「リラよ」
彼女は笑顔で僕に行ってきた。
「リラを見たいから、バルセロナの」
「ああ、あの花が咲く頃にだね」
「あの町に行くわ。それでどうかしら」
「わかったよ。それじゃあね」
「お金を貯めてね」
とにかく先立つのはお金だった。お金がないと旅行にも行けない。
「その時期に行きましょう」
「わかったよ。それじゃあね」
「お金今から必死に貯めるから」
彼女の目が燃えていた。己
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