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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第5話『魔の思惑』
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山の自然は非常に絵になり、むしろ滴る雫が葉を照らす光景などその美しさに拍車を掛けている。小鳥が囀り、風が葉を擦り合わせて鳴らす音は非常に心地良く−−



 −−そこに混ざる異臭は、明らかにジークを警戒させる要因となった。

「……っ!」

「……!」

 ジークが身構え、スィーラがその臭いに顔をしかめる。腐臭とは違う。何か特殊な臭いだ、明らかに自然界に存在する臭いではない。
 発生源は山頂。現在地は山道の中間を超えて7割に差し掛かろうかという所。

「……スィーラ。少し走るけど、着いて来れそうか?」

 白銀の少女に問うと、こくりと頷く。正直言ってジークの身体能力は魔力強化により一般人のソレとは全くもって別物なのだが、今はこの異臭の原因を探るのが先決。幸いこの山道は一本道だ。先に着いても、問題を確認してすぐ降りれば合流出来るだろう。
 両足に、魔力を込める。

「……っ、らっ!」

 湿った大地を蹴り、ショートカットの為に上空へと飛び上がる。そのまま魔力の推進力を利用して先へと進み、山頂へと向かう。


 −−ドゴォォォォォッッッッ!!


 ──轟音。

 炸裂。

 暴風が生まれ、先程ジークが居た場所に土煙が立ち上がる。その中心を突っ切って姿を霞ませる程の高速で人影が……言うまでもなくスィーラが、ジークを追い越して山頂へと飛んでいく。その姿を捉えられたのはほんの一瞬で、抉り取られた空気の埋め合わせのために収束していく気流にジークも囚われそうになる。

「……はっ?」

 思わず声が漏れた。

 −−以前にも解説したが、死徒は決して魔族の中では強力な部類ではない。一般の人間一人で挑もうものならたちまち喰われてしまうし、力も人間の2倍はある。が、それでも他の魔族には劣る方だ。精々、精一杯の腕力で並の木を折る程度。
 故に、死徒には決して、跳躍だけで大地を粉砕し、音速を突破して飛行するなどという芸当は不可能なのだ。


 ──が。あの少女は、それを平然とやって見せた。


「……って、悠長に考えてる場合じゃねぇな……っ!」

 全身にルーンを施し、加速系の魔術をフルで盛り付ける。空気の壁を蹴り蒼い弾丸となったジークは、スィーラの後を追って山頂へと突入する。木々の小枝を抜けて大地に足を叩きつけ、急制動を掛けてやっと停止する。
 ブーツを泥で汚しつつも辺りを見回し、軽いクレーターと化した大地の横で立つスィーラを見つける。彼女はこちらに気付くと笑みを浮かべるが、直ぐに周囲の更に強くなった異臭に耐えられず鼻を摘む。
 ここまで来るとハッキリと分かる。これはこことは別の世界の匂い。

「……ポータルか」

 スィーラの目の前にある『窓』。それはこれまで何度か見たことの
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