百四 一騎当千
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攻撃に向いていない非戦闘員の二人は苦み走った顔をしつつも、迫り来る武人達へ果敢に挑み始めた。
「―――【火遁・鬼燈籠】!!」
印を結んだ香燐が発動した術により、無数の鬼の顔をした火の玉がぼぼぼっと宙に現れる。それらはまるで幽鬼のように自在に飛び回り、武人の身体に飛び火していく。
背中合わせに戦っていた多由也が珍しく口笛を吹いてみせた。
「へぇ…ただの眼鏡女かと思ってたけど意外な術使えたんだな」
「だからその呼び名やめろって言ってんだろ!!」
香燐の出身地である草隠れに伝わる火遁の術――【火遁・鬼燈籠】。
その火の玉を操って武人達を溶かしていく香燐と、笛の音で怒鬼を操り幽霊軍団を蹴散らす多由也を尻目に、キンは自分の指に結んだ鈴の糸を見下ろした。
その先に繋がれてる方向とタイミングを見計らって、彼女は「ちょっと」と戦闘に夢中な面々に声を掛ける。
「巻き込まれるわよ」
瞬間、糸を思いっきり引っ張る。同時に四方を囲む山々から一斉に鈴の音が鳴り響いたかと思うと、上方から小石がパラパラ降ってきた。
足元に振動が伝わり、ようやく異常を察した再不斬達が周囲に視線を這わす。やがて鈴の美妙な音に雑ざって、何やら妙な地鳴りが聞こえ始めた。
「おいおいおいおい…」
「キン、まさか…」
ドスの問いに当然の如く頷き返して、キンは自慢の艶やかな黒髪を靡かせた。
地を蹴った彼女に倣って、跳躍した忍び達が一際高い崖へ駆け上る。
刹那、幽霊軍団がいる峡谷目掛け、周囲の山々から土砂が崩れ落ちる。土ごと根こそぎ滑り落ちてきた土砂は軍団の全身を全て覆い尽くしていく。
前以てキンが四方の山に数多の鈴を仕掛けておいたのだ。
手元の糸の先には、山々のあちこちに仕掛けておいた鈴と繋がっている。それらの鈴を共振させ、地面の中を振動させる。生じた音波を共鳴により増殖させ、地鳴りに導き、基盤の岩石と土の境目を緩くさせる。
以上により、キンは鈴の音で、土砂崩れを引き起こした。
以前、中忍予選試合にてシカマルと闘った際、キンは後頭部を背後の壁に強打して負けた。その敗因から、状況や地形を把握する事を学んだ彼女は、今回周囲の自然を活かしたのである。
「キン!前以て言っておいてくださいよ!」
逸早く音による攻撃だと気づいたドスがキンを咎める。反して、土砂崩れの被害から免れた多由也達は意外そうにキンを見遣っていた。
「ま、これくらいでやられる軍団だったら、苦労は無いがな」
崩れた峡谷の土砂から平然と姿を現してくる武人を次々と薙ぎ払いながら、再不斬が呟いた。
「まぁでも土砂から出てくるところを仕留めればいいんだから、さっきよりはマシじゃない?」
再不斬の隣で水月が軽口を叩く。「それは、そうですけど…」と渋々同意を示したド
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