6.お別れをしに来たんじゃない
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私はひこざえもん提督にお別れをしに来たのではありません」
? どういうこと? お別れしにきたんじゃないなら何しに来たんだこの人は? 鈴谷を見ると、やっぱり僕と同じで頭にはてなマークが浮かんでるようだ。
「……どういうことよ一航戦。あんた、提督さんが死んでも悲しくないの?」
「そうじゃないわ。私もひこざえもん提督がお亡くなりになったのは悲しい」
「じゃあ何なのよ……一航戦がここにきた理由って……」
瑞鶴さんはうつむいているせいで、自分の袴? スカート? に涙がぽろぽろこぼれていた。肩をわなわなと震わせて、泣くのを静かにこらえながら、加賀さんにそう聞いていた。
一方の加賀さんは、急に僕と鈴谷の方を……というより僕の方を見た。そしてまっすぐな眼差しで僕を見つめ、よどみなく、すっぱりとこう言った。
「ひこざえもん提督は常々“俺のバカ孫に、自慢の孫娘たちを見せてやりてぇ”と言っていました。だから私は、ひこざえもん提督逝去の報告を受け、提督の希望を叶えたいと思いました」
「爺様が……そんなことを? あなた達のことを孫娘だと?」
「ええ」
爺様……言ってることは素敵だけど、バカ孫は余計だ……。
「でも、さすがに全員をここに連れてくるわけにはいかない。あなたにも迷惑がかかる。苦労してあなたとの約束をとりつけてくれた鈴谷にも悪い」
確かに、突然200人以上の子が突然やってくるのは迷惑以外の何者でもないわなぁ……ついでに言うと、最初にうちに来て僕の家族と『一人二人なら来てもいいよ』って約束を取り付けた鈴谷の頑張りを無視することになる。それは加賀さんの言うとおり、鈴谷に対して失礼だ。
「そんなん……別に気にしなくていいのに……鈴谷気にしないよ?」
いや鈴谷。そこは加賀さんの気持ちを汲んであげよう。……そして現実問題として、お前は気にしなくてもうちが気にするから。いっぺんに200人も来られたら無理だからうちの収容能力じゃ。
「一航戦、そんなこと考えてたんだ……」
「そうよ。だからあなたを連れてきたのよ。私自身と、私が最も信頼しているあなたを見てもらいたくて」
「?!」
なんか空気が変わったぞ? 瑞鶴さんがハッとして顔を上げ、驚いた表情で加賀さんを見つめてる。一方の加賀さんは、顔色一つ変えずに真っ直ぐに僕と鈴谷を見ていたが、やがて鈴谷の方に向き直り、頭を下げた。
「鈴谷。こんな機会を作ってくれたのはあなたのがんばりのおかげ。本当にありがとう。私に、ひこざえもん提督の望みを叶えさせてくれてありがとう」
「い、いや……どういたし……まして……」
加賀さんにそう感謝され、困ったように……でもちょっとうれしそうに、赤いほっぺたをポリポリとかいていた。つづいて加賀さんは僕に……
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