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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八話 両軍接触
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頼しているのだろう。だが万全の信頼とは言えない。

今回彼はケンプ、レンネンカンプ、ビッテンフェルト、ファーレンハイトを連れて行った。別働隊の司令官としてはおかしな人選ではない。いずれも攻勢に強い男たちだ。だがそれだけだろうか?

ケンプとレンネンカンプは剛直な男だしビッテンフェルト、ファーレンハイトは攻撃精神の旺盛な男だ。俺では指揮がしづらいだろうと思ったのではないだろうか。

考えすぎかもしれない。しかしそう思ってしまうと言う事は、まだまだ俺は力不足なのだ。俺が望むのは労わられる事ではなく彼に警戒される事だ。

俺に大軍を預けるのは危険だ、そう思われる程の男になりたい。今は無理だ。俺は彼に及ばない。今回の戦いで嫌と言うほど見せ付けられた。反乱軍、フェザーン、そのフェザーンに通じた貴族たち。ヴァレンシュタインは全てを操ってこの会戦を演出している。

戦場で勝つのではなく戦場の外で勝利を確定する。戦って勝つのではなく、勝ってから戦う。彼にとって戦場で戦うのは敵味方にその事実を認めさせることでしかない。

ヴァレンシュタイン自身は当初、戦場に出るつもりはなかった。俺に本隊を率いさせ、別働隊はメルカッツに任せるつもりだった。彼にとってはある一定の能力さえあれば誰が指揮官でも良かったのだ。

能力に自信のある人間ほど自分の力で勝ちを収めたがる。かつての俺がそうだった。イゼルローンでは其処を敵に突かれた。僅か一個艦隊で攻め入ろうとは何を考えていたのか。

今なら自分がどれ程危うい戦いをしていたのか判る。キルヒアイスとも何度も話した。二人で得た結論は自分の武勲に拘る余り戦闘に勝つ事と戦争に勝つ事を混同していたということだ。愚かな話だ。

指揮官の能力に頼るのではない、誰が指揮官でも勝てる戦争を作り出す。その上で有能な人間を指揮官に据える。それが将ではない、将の将たる者の務めだ。これから俺が目指すべき道でもある。

これからだ、これから少しずつ彼との差を縮める。そしていつか追い抜く。そのとき俺の前に道は開けるだろう。皇帝への道が。



宇宙暦796年8月16日  第五艦隊旗艦リオ・グランデ アレクサンドル・ビュコック


総司令部への申し入れは何の意味も無かった。こちらの危惧は極楽トンボとしか言いようのない小僧の楽観論、敵への過小評価の前に拒否された。総司令部に慎重論を唱える人物が居ない事がどうにも不思議じゃ。

ドーソン総司令官にいたってはイゼルローンでの様に独自行動では戦えても宇宙艦隊としては戦えないのかと嫌味を言う始末。とても正気とは思えん。何処か狂っておる。

総司令部はこの危険を認識しておらん。いや認めるのを拒否しておる。九個艦隊を動かした以上、何の戦果も無しに撤退は出来ん、イゼルローン攻略組み
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