暁 〜小説投稿サイト〜
魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第4話『重なるイレギュラー』
[1/6]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「──っ……!」

 メイリアは、目を丸くしていた。
 金色の少女の首に一切の傷はなく、吹いた突風がその髪を激しく揺らすのみに終わる。
 振り向いたメイリアの眼前で、しかしその鈍色の巨斧は振り切られてはいなかった。

 何処からか伸ばされた細く、真っ白な指先が。
 深緑のドレスと白銀の髪を揺らした、死徒の少女が。

 その鈍色の刃を、受け止めていた。

『ゥ"るぅぅぅぅぅ………!』

 影の巨人の理性無き頭脳に、新たな敵意が芽生える。
 突如現れた新たなる得物、その悉くを叩き潰す為に、暗く染まったその刃を振り上げる。

 −−"その前に"

 黒曜の剣が、力を纏って宙を奔る──。

レヴェリ(Lv.2魔術)カノ(火素)ハガル(爆素)マンナズ(範囲設定:剣)オール(融合式)。−−『ウルズ(解放)』」

 2属性のルーンが漆黒の長剣に刻まれ、魔力を宿した剣が振り抜かれる。胴に空けられた傷口を伝って輝くルーンは影に写り、そして内に潜む魔素はその術式を起動し、紅蓮の炎が噴出される。ジークが指先で宙に新たなルーンを刻むと同時、紅の殺意は集いて一本の槍と化し、その暗闇を光で満たす。
 火の粉が散り、熱気が踊り、命は脈動する。

『ゥ"……ェ"ァァァァァァァアアアアア"ア"ア"ァァァァァァッ!!』

 黒の巨獣は命を振り絞り、その大腕を振るう。風を切る轟音を伴ってその爪がジークへと迫るも、蒼衣の青年の髪を数本巻き込むだけに留まる。

 致命的な、隙が生まれる。

 こうなればもう、ジークが巨人を焼き殺す方が早い。

「やってくれたなデカブツ……!死んで詫びてろ……ッ!」

 内側から血肉を焼き、風穴すら残さない。暗闇が溶け、その魔術は完成する−−。

「『次世界式:魔術字収束(プロジェクタリ:ルーンミリア)』ッ!」

 最後の呪文を以って、炎閃が森を貫く。
 これこそが《神殺し》が編み出し、『対魔傭兵(リ・メイカー)』に伝えた魔術式。古代の時代の魔術師が用いたとされる魔術を再現し、尚且つ実戦用に改変された魔術。『古代式:ルーン魔術(エンチャント:フサルクファンタズマ)』。
 神々の戦争ですら用いられたその魔術は、魔法使い専門ではないジークが使用した時でさえ強力な効果を発揮した。
 ルーンにより構成された暴威は、焔の嵐となってその巨躯を焼き尽くす。

 緋色の風が晴れた時には、焼け爛れた肉片の欠片以外に、何も残らなかった。

 その光景を目の当たりにした金色の少女は、混乱しつつもやっと声を絞り出す。

「……驚いた。ジークって、ホントに強いのね」

「って、助けてもらって第一声がそれか」

 ウンザリしつつも突っ込み、目を丸くした彼女から視線を
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ