5.脳を溶かしてくる系女子
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納得いかないようだったが、僕だってチューペット食べたい。暑いし。
「鈴谷はハーゲンダッツがよかったなぁ。ちゅー……」
「だったら返せぶどう味のチューペット。今すぐ返せさぁ返せ。ちゅー……」
「まぁこれはこれで好きだからいいんだけど。ちゅー……」
「なんなら新しいチューペットでもいいぞ。返してくれるんならな。ひゅぼっ……」
こうして僕と鈴谷がいつものように軽口を叩き合いながらチューペットを堪能していると、鹿島さんがスリッパの音をパタパタさせながら和室から出てきた。
「チューペットですか?」
「もういいんですか?」
「はい。おかげさまで、ちゃんと提督さんにご挨拶することが出来ました」
鹿島さんはそう言いながら、鈴谷の隣にふわりと腰を下ろす。鹿島さん。僕の隣の席、空いてますよ?
「いいじゃん鈴谷の隣でさー」
「お前には聞いてない」
「くすっ……お二人は仲がよろしいんですね」
「めっそうもない。こんな傍若無人で若さという武器を最大限活用して振り回す女子高生、迷惑以外の何者でもありません」
「ひどっ」
「ふふっ……そういうことにしときましょっか」
僕と鈴谷を見比べ、鹿島さんはくすくすと笑う。鹿島さんの言葉の一つ一つが僕の頭に染み渡り、心地いい快感と共に僕の頭を溶かしていく。……ダメだこの人。鈴谷が無自覚にファンを作っていくタイプなら、鹿島さんは無自覚に中毒者を量産していく、もっとも危険なタイプの女性だ。
「それはそうと……爺様にはいつもセクハラされてたみたいで……」
「ぁあ確かに。提督さん、私のスカートやら服のすそをいっつもちょんちょんって引っ張ってきて……」
ちょんちょん……なんだこの可憐でかわいい言葉……こんなに美しい日本語が存在したのか……
「で、私が『ダメですよっ』て言っても、『その言い方がセクシーでいい』って言って、全然やめてくれなくて……」
「僕が許可します。七回地獄送りにしてやってください」
こんな天使にセクハラを働くとはけしからん。たとえ全世界の裁判所が無罪判決を出したとしても、僕だけは有罪の木槌を叩き続けてやるッ。
「でも……突然鎮守府に来なくなって……提督さん、お亡くなりになってるって分かって……あの日々が……今ではとても懐かしくて……」
「……」
「そっかー……私のスカートを引っ張ってくる人はもういないんだ……困ることはなくなったけれど……寂しいな……提督さん……」
鹿島さんは頬杖をつき、寂しそうに微笑んでテーブルを見つめていた。きっと鹿島さんは今、爺様の傍若無人っぷりに苦しめられていた頃のことを思い出している。そして、死を受け入れながらも、あの楽しかった日を懐かしむ郷愁の気持ちを抱いているのだろう。
「鹿島さんっ!」
「はい?
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