5.脳を溶かしてくる系女子
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しに覚悟が宿ったようだ。さっきまでのふわふわした眼差しとは明らかに異なり、視線に一本芯が通ったように感じた。僕は鹿島さんの周囲の空気か変わったことを感じて正気にもどり、和室の襖を開けるべく、二人の前に出た。
「じゃあ……開けます。どうぞ鹿島さん……」
「……はい」
鹿島さんの返事を受け、襖を開ける。鹿島さんの目の前につきつけられる、爺様の遺影。
「……」
鹿島さんは何も言わず、何も言葉を発せず、ただジッと爺様の遺影を見ていた。微動だにせず……目をそらさず、爺様の遺影を目に焼き付けるように、ただジッと遺影を見ていた。
「……提督さん」
鹿島さんが口を開いた。その顔は、微笑んでいた。
「……ホントに逝っちゃったんですね。鹿島を置いて……」
見ているこちらの涙を誘うほどの悲しみを必死に隠して、微笑んでいた。
「……」
「鹿島さん……」
「和之さん? 中に入ってもいいですか?」
「……どうぞ」
鹿島さんが、ゆっくりと力なく和室に入った。和室に入った鹿島さんは、遺影のそばまで来ると、爺様の顔を優しく、とても愛おしそうに撫でていた。
「提督さん? いつも鹿島のスカートを引っ張ってましたよね?」
?! 爺様?! こんな美人でかわいい鹿島さんのスカート引っ張って遊んでたのか?! 次会ったら出会い頭にラリアットきめて折檻してやるッ!!
「その時はイヤだったけど……今は提督さんがいなくて、とてもさみしい……」
「……」
「もう……鹿島のスカート引っ張ってくる困った提督さんは……いないんですね……」
「……」
「寂しいなぁ……ぐすっ……また……提督さんに、会いたいな……」
そう言って鹿島さんは、目に涙を溜め寂しそうに微笑みながら、愛おしそうに爺様の遺影を撫でていた。その様子はさながら、愛する男性の死を悼み生前の姿を懐かしんでいるようであった。一輪の白い鈴蘭。そう形容してもおかしくないほどに、彼女は可憐で美しく……
「ちょっとかずゆき」
「ん? なんだよ」
「なにそんなにうっとり鹿島さん見つめちゃってるの?」
「たわけがッ」
「とりあえずさ。鹿島さんを一人にしてあげよ」
「だな」
僕と鈴谷は静かに和室から出た。襖を閉じる時にチラッと見えた鹿島さんは、とても寂しそうに微笑みながら、優しく爺様の写真を撫でていた。ちくしょう。
「なんでそんなに悔しそうなの」
「爺様に負けた気がするから」
「?」
鈴谷にはわかるまい。この悔しさというものが……。
居間に戻ったあと、鈴谷が『暑いからアイス食べたい』とわがままを言い出したので、冷蔵庫に奇跡的に残っていたぶどう味のチューペットを二人で分け合うことにした。鈴谷は半分しか食べられないのが
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