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真田十勇士
巻ノ四十六 婚礼その八

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「進めばよい」
「確かに、それがいいですな」
 由利も頷いて答えた。
「船で進む方が」
「では海からすぐに九州に向かい」
 伊佐は落ち着いた声だった。
「忍として島津家を調べますか」
「そうする、だから陸よりも海じゃ」
 幸村はまた言った。
「そうすることにしたのじゃ」
「さて、海を進むのは我等にとっては珍しいですな」
 霧隠はしみじみとして述べた。
「川はありますが」
「確かにのう、上田は山の中にあるからな」
 清海も言う。
「これは珍しいことじゃ」
「ははは、しかしそれもまた面白い」
 猿飛はその大きな口を開いて笑っていた。
「伊予から出た時を思い出す」
「ああ、そういえばな」
「御主は伊予の生まれであったな」
「だから海にもな」
「馴染みがあるな」
「左様、山育ちであるが」
 猿飛は仲間達に笑って答えた。
「それでもじゃ」
「海にもじゃな」
「馴染みがある」
「そうなのじゃな」
「うむ、よくじい様に海に連れられて水練を教わった」
 笑みを浮かべたままでの言葉だった。
「瀬戸内の海も懐かしいわ」
「では、じゃな」
「海に行くのが楽しみなのじゃな」
「そうじゃな」
「そうじゃ、さてどうなるか」
 また言う猿飛だった。
「瀬戸内での船旅はな」
「瀬戸内は海流も渦も多いと聞く」
 ここでこうも言った幸村だった。
「船で進むにしてもな」
「はい、厄介ですな」
「小島も多いと聞きます」
「海賊もまだいるそうですし」
「無事に辿り着くには」
「我等だけでは難しい」
 幸村は冷静に述べた。
「だから大坂で然るべき者を雇いな」
「そのうえで、ですな」
「船に乗り」
「その者達に船を昼夜動かしてもらい」
「九州に向かうのですな」
「そのつもりじゃ」
 まさにというのだ。
「拙者はな」
「では、ですな」
「これより大坂に向かい」
「そしてそのうえで九州に入る」
「そうしますな」
「皆女房達には別れを告げたか」
 幸村はあらためて彼等に問うた。
「それは済ませたか」
「はい、既に」
「そのことはもう済ませました」
「だからこそここに来ました」
「ならよい、後はな」
 幸村は彼等の言葉を聞いて納得した顔で頷いた。そのうえで。
 上田を発ち大坂に向かう、彼等だけが知っている忍道を旅装束で進むことにした。彼等は山道を進んでいった。
 その時にだ、十勇士達は幸村に言うのだった。
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