3部分:第三章
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第三章
「あれはいいよな」
「僕行ったことないんで」
「おい、日本人でメイド喫茶行ったことないのか!?」
「高校生だったんですよ」
僕が言うのはこのことからだった。
「それで何でそうしたお店に」
「高校生は駄目なのか、日本じゃ」
「校則でそうした場所に行くことは禁止されてました」
「厳しい学校だったんだな、随分」
「ドイツでもそうじゃないんですか?」
「そう言われればそうか」126
先輩とそんな話をしたうえでだった。僕は先輩に案内されてその日本人の娘が来ている場所に向かった。そこはグラウンドの正門のところだった。
そこにいるとだ。何とだ。
彼女がいた。信じられないことに。
その彼女を見て。僕は唖然となった。それでだ。
言葉を出そうとしても出せない。驚き過ぎて。
けれどその僕に。彼女は笑顔で言ってくれた。
「来ちゃった」
「来ちゃったって」
「御免ね、待つって言ったけれど」
それでもだと。照れ臭そうに笑って僕に言ってくる。
「待てなくて。それでね」
「ドイツに来たんだ」
「ドイツの。チューリンゲンの大学にね」
この場所のその大学にだった。
「留学することにしたの」
「それでここにいるんだ」
「ええ、そうなの」
「まさかと思ったけれど」
「驚いたわよね」
「驚いたなんてものじゃないよ」
我が目を疑った。本当に。
「こんな思い切ったことするなんて」
「驚かせて御免ね」
彼女がまた謝ってきた。
「本当にね」
「いいよ。けれど」
「けれど?」
「あの時は僕が謝って」
それで今度はだった。
「君も謝って。何かおかしいよね」
「そうね。それでも今はね」
「一緒にいられるね、また」
僕はこう言った。言うとそのそばから。
嬉しいせいか。目から涙が出て来た。そしてそれは彼女も同じで。
二人で嬉し泣きをしながら。こう言い合った。
「じゃあこれからも」
「宜しくね」
僕達は二人で言い合い。そうして。
笑顔で手を握り合った。その僕達を見て先輩も笑顔になって。こう言ってくれた。
「よかったな。これからは二人だな」
離れ離れになったけれどそれが元に戻って。彼女が来てくれて。
それで握り合った手はとても温かかった。今の涙もとても熱いと感じられた。
ごめんよ涙 完
2011・12・5
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