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英雄伝説〜菫の軌跡〜(零篇)
第35話
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ワジを紹介しようとしたが、先にワジが名乗った。

「僕の名前はワジ。ワジ・ヘミスフィアだよ。IBC総裁のご令嬢、マリアベル・クロイスさんだね?お会いできて光栄だよ。」

「あら、うふふ。機先を制されてしまったわね。ワジさんと言ったかしら。よかったら近くに席を用意してもらいましょうか?」

「いや、それには及ばない。実は少々、そちらの彼らに伝えたいことがあってね。」

「え………」

ワジの言葉にロイドが驚いたその時、ワジはロイド達に近づいて小声で自分の伝えたい事を口にした。



(………窓から裏庭を見下ろしたら犬が何匹も眠っていた。何か心当たりはあるかい?)

(……本当か?)

(犬というと………例の軍用犬の事みたいね。でも、眠っていたって……)

「………―――マリアベルさん。申し訳ないですけど少しばかり席を外します。」

「フフ、色々と面白い事になっているみたいですわね。わたくしの方はお気になさらずに。せいぜい、あなた方の代わりにオークションでの出品物を見届けておきますわ。」

「………感謝します。」

「ありがとう、ベル。」

そしてロイドとエリィはワジと共にオークション会場を後にした。



(―――来たわね、二人とも。)

会場を外に出ると会場の外で待機していたレンがロイド達に近づいてきた。

(レン。レンも外の異変に気づいて俺達を待っていたのか?)

(ええ。庭に放たれていたワンちゃん達が眠っていたけど……フフ、何を意味しているのかしらね?)

(考えられるとすれば―――何らかの侵入者が現れた………その可能性が高いかもしれない。)

(なるほど………確かに。)

(いずれにしても何かが起ころうとしている………それだけは確かみたいだね。)

(ああ、念の為屋敷の中を一通り回ってみよう。異変に気付けるかもしれない。)

(ええ………!)

(フフ………僕も付き合わせてもらうよ。)

(うふふ、どんなイベントが起こるのか今から楽しみね♪)

その後ワジとレンを加えたロイド達はさまざまな場所を見回っていると、オークションの品々を管理している部屋の前に倒れているマフィアを見つけた。



「駄目だ、気絶している………」

「へえ、どうやら一撃で昏倒させられたみたいだね。」

「こ、こんな事ができるのは………」

「レン達が知る限り一人しかいないわよねぇ?」

「……とにかく中に入ろう!」

ロイド達が部屋に入る少し前、なんと銀がマフィアに取り囲まれていた。

「て、てめえ………!」

「いつの間に現れやがった………!」

「フフ………我が名は”(イン)”。月の光さす所ならばどこへでも現れよう。」

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