3部分:第三章
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第三章
それでもだ。ついだった。
「あの声っていいよな」
「ほら、言ったよ」
「やっぱり香菜ちゃんだよな」
「香菜ちゃんの声聞いてな」
「元気が出るんだな」
「だから違うって」
まだ言う彼だった。今更だがだ。
「僕はただ」
「けれど声聞くとな」
「全然違うよな」
「本当にな」
「それを今更言ってもなあ」
「何ていうか」
手遅れだ、とはあえて言わない彼等だった。しかしだ。
彼はこの日最初から最後まで上機嫌だった。それでだ。
部活も下校もだ。笑顔のままだった。これが彼だった。
そんな中でだ。昼の放送時間の時だ。
香菜の放送を聞きながらクラスで弁当を食べている彼にだ。クラスメイト達がだ。
こんなことをだ。彼に言ってきた。
「ちょっといいか?」
「飯食い終わってからでいいからな」
「んっ、何だよ」
弁当のおかず、ハンバーグを食べながらだ。紘は彼等に返した。
「何か奢ってくれるのか?」
「そのドカ弁食ってまだ食うのかよ」
「しかもおやつに林檎まであるだろ」
「お茶も飲んでるのにか?」
「まだ食うのかよ」
「育ち盛りなんだよ」
幾分小柄の彼だがそれでもこう言うのだった。
「だからいいんだよ」
「育ち盛りっていってもな」
「幾ら何でもそれはないだろ」
「本当にな」
「食い過ぎたら太るだろ」
「僕別に太る体質じゃないから」
特に気にしないとだ。彼は返す。
そのうえでだ。クラスメイトに問い返した。
「で、何なんだよ」
「ああ。御前呼ばれてるぜ」
「ちょっとな」
「余ばれてる?誰にだよ」
そう言われてだ。紘はだ。
今度は弁当の白米を掻き込みながらだ。それで言うのだった。
「一体誰なんだよ」
「まあちょっと来てくれよ」
「来てくればわかるからな」
「それでな」
「別に先輩の誰か怒らせたとかじゃないよな」
それでだ。呼び出しではないかというのだ。
「そうじゃないのか?」
「だからそういうのじゃないからな」
「っていうかそんな物騒な話こんな笑顔でするか」
「安心しろって。そういうのじゃないからな」
「それは保障するぜ」
確かにだ。そういうことはないとだ。彼等は言った。
それでだ。あらためて言うのだった。
「っていうか御前確かにあれなところあるけれどな」
「別に他人に怨まれたりとかないだろ」
「そういうことはしないだろ」
「好き好んで怨まれる趣味はないからな」
彼自身もだ。こう答える。
「特にな」
「だろ?だったら安心しろって」
「まあ悪い娘じゃないしな」
「会いたいって言ってるからな」
「ふうん。それで場所は?」
弁当を食べ終えてだ。おやつの林檎をかじりながらだ。
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